27646 Précis WORLD BANK 創立31周年を迎える OPERATIONS EVALUATION DEPARTMENT SPRING 2003 NUMBER 232 CGIAR: その功績を称えながらも、 新たな課題に直面 国 際農業研究協議グループ(CGIAR )は、ロックフェラー財団 とフォード財団が長年支援してきた 4 ヵ所の国際農業研究セン ター(コロンビア、メキシコ、ナイジェリア、フィリピン)の 活動を拡大するために1971年に設立されました。CGIARは、世界銀行の 純利益からグラントが支払われた初のグローバル・プログラムで、設立 当初の使命は、デイビッド・ホッパー元議長が語ったように、科学の力を 利用して戦略的に「食糧に貧窮する消費者の食卓に上るご飯の量を増や すこと(即ち、コメの生産高を増大すること) 」にありました。そして、 これを実現するため、先進国で利用されている最先端の科学を駆使して、 食糧不足に悩む諸国とその国民の利益となる技術を開発しようというも のでした。今日、同グループは世界16ヵ所の国際研究センターを支援し、 加盟国数は当初の 18 ヵ国・機関から 62 ヵ国・機関(内、途上国と経済移行 国は24ヵ国)へとめざましい発展を遂げました(Box 1参照) 。 世界銀行の業務評価局(OED )は、世銀が携わ 評価結果 る70件ものグローバル・プログラムの全体的な評 CGIARは国際間の協力を促す独自の手段となっ 価活動の一環として、CGIAR のメタ評価を最近 終了しました。現在、CGIAR は、使途が全く制 てきたとOEDは結論付けています。生産性向上 約されていない資金を年間5,000 万ドル受けてい に向けた同グループの研究は、雇用と所得の増 ますが、この水準は、開発グラント・ファシリ 大、食糧価格の低下、作地面積の縮小などを可 ティー(DGF)からグローバル・プログラムに支 能にし、貧困削減に大きな影響を与えてきまし 払われるグラント全体の 40 %を占めています。 OEDが世銀のグローバル・プログラムの業務をレ た。この現象は「緑の革命」として知られてい ビューすることになった背景には、世界各地の ます。加えて、2015年までに貧困を半減させる 様々な問題に対応するため DGF グラントの獲得 という国際コミュニティーのミレニアム開発目 競争が激化したことと、グラント受益者を厳選 する必要性が生じたことなどが要因として挙げ 標を実現するには、持続的農業の生産性向上を られます。 さらに推進することがカギとなっています。 2 World Bank Operations Evaluation Box 1: グローバル・プログラムの概略 図1:貧困削減に確実に影響を与えた研究活動の大 幅な低下 CGIARは、世銀の支援するグローバル・プログラムの中では最も古 く、最大規模のものです。 生産性向上 • CGIAR は、独立採算制の研究セ ンター 16 ヵ 所をはじめ、世界 100 ヵ 国以上で活動を行う 科学者やス タッフ 8,500 名を支援し NARSの強化 ています。 • メンバー数は62ヵ国・機関。その内訳は、途上国24ヵ国、先進 生物多様性の確保 国22ヵ国、国際/地域機関12件、財団4件となっています。 • 世界銀行、国連食糧農業機関(FAO )、国連開発計P )、さらに 環境保護 (最近になって)国際農業開発基金(IFAD)からの共同支援を 得て、CGIAR は、FAO に 設置された 技術諮問委員会から ガイ ダ ン ス を受けながら、世銀に 置かれた 事務局を 通じて 管理運 政策改善 営されています。同委員会は最近、科学理事会へ と 暫定的に –8% –6% –4% –2% 0% 2% 4% 改編されました。 研究センターの研究活動別支出の平均年間変化率 • CGIAR は、設立以来、国際社会から 総額56 億ドルの支援を受 (インフレ調整後)、1992〜2001年 けていますが、そのうち使途に制約のない資金として9億3,000 出処:CGIAR財務報告書(1992〜2001年)に基づいて算出 万ドル余りを世銀から受けています。 それでも CGIAR は大きな問題にも直面しています。かつて 図2:使途に制約のある資金の増大 ほど農業の生産性向上に力を入れていないうえ、現在行われて 2000年における米ドル額 いる一連の活動は、同グループの比較優位を利用したものでも 400 なければ、またその主力である能力を活かしたものでもありま せん。農業の生産性向上に関する研究(即ち CGIAR のような公 350 アジェンダ以外:制約付き 的資金により運営しているグローバル・ネットワークに最も適 57% 300 しているといえる国際・地方公共財)に費やされた費用は、1992 合意に達したアジェンダ:制約付き資金 250 年から2001年にかけ、年々実質6.5%の割合で減少したのに対し、 政策改善や 環境保護へ の支出は、同期間中に年間3.1 %の 割合で 200 合意に達したアジェンダ:制約なし 増大しています(図1参照) 。 150 それと同時に、CGIAR に 拠出された資金総額は、過去10 年 43% 100 来、名目上停滞気味、実質では減少しているうえ、資金の使途が ますます制約されるようになっています。1992年から2001年に 50 かけての 拠出総額は、名目上で年間平均0.7 %増大したものの、 0 1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 実質では年間1.8 %の減少を み ています。また、使途が制約され た資金(CGIAR自身の報告システムにより定義)の水準は、1992 CGIARの研究活動に対する拠出額の合計(累積) (インフレ調整後の2000年価値:単位百万米ドル) 年に資金全体の 36 %を占めていたのが、2001 年には 57 %に増大 し、しかも増加 分 の大半は 1998 年 以降 に生じています(図 2 出処:CGIAR財務報告書、1988〜2001年 参照)。 れます。1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境・開発 研究内容の変化 会議、そしてド ナ ー国で環境保護を 訴える動きの 高まりなどに CGIAR の研究内容に 変化が生じ、資金の使途に制約が 設けられ より、環境問題に対応するよう CGIAR に 圧力がかかりました。 るようになった背景にはいくつかの要因があります。その一つ そして 第四に、多数の途上国政府とそれを支援するド ナ ー(こ は、緑の革命に対する 否定的な 見方が 高まったために、生殖質 れには世銀も 含まれる。図3 参照)が、 (途上国に お ける)国家 向上の研究が主なド ナ ー国・機関の関係者の間で 不評をかった 農業研究 機 関(NARS )の 確立 に資金を 投 入しなかったため、 ことが挙げられます。第二に、緑の革命の 期間中に農耕シ ス テ CGIAR のド ナ ーは、同グループ 傘下の研究セ ンターに対して、 ムが急激に変化したために土壌や水源に対する負荷が強まり、第 現地の農民の要求に沿った部分で研究を行わせ、国家・地方公共 二次世代の環境問題を 引き 起こしたことに対して、CGIAR が適 財の 不足分を 埋めようとしたことです。こうした 不足分は 理想 切に対応したことです。第三に、環境保護主義の 台頭が挙げら 的には国家機関が 補う べ きものです。それと 並行して、60 万点 Précis 232 3 に 及ぶ CGIAR の 遺伝子バンクのコレクシ ョ ンは、独特な国際公 を 果してきました。例えば、研究セ ンター や プログラム、各種 共財であるにも 拘わら ず 、維持費と 管理費の 不足からないがし 活動に対する資源配分の提案、予算の監視、各研究センター及び ろにされてきました。 CGIAR システム全体のレビューの遂行などが挙げられます。今 また、1990年代の半ばからCGIARの資金調達過程に2つの変 日では、TACが設定する中長期の優先項目とは無関係に、ドナー 化が生じたことにより、CGIAR の研究費に対して 個々のド ナ ー の 意向で資源の 配分が 概ね決められるようになっています。こ 国(お よ び 国内の関係者)がさらに大きな影響力を行使できる うした CGIAR の 経験は、一つの国際組織の 中で 個々の利害関係 ようになりました。ま ず第一に、1993 〜94 年に 起きた 財政危機 者の関心をまとめても、国際公共財の 形成にはつながらないこ に対応して、世銀が、それまでの「最 後 の(貸 手なら ぬ )ド とを示しています. ナー」モデルから「マッチング・グラント」モデルへと供出額の 配分方法を変更したことです。従来の方法では、技術諮問委員会 全体的な対応が必至 (TAC )が 規定した CGIAR シ ス テム全体の優先研究課題に対し、 同時に、遺伝資源の 管理、バ イオ テク ノ ロ ジ ー革命、知的 他のドナーが拠出した金額の合計が所要額に達しないときに、世 財産権(IPR ) 、民間セ クターでの研究といったものの 重要性が 銀が 差額を 穴埋めしていたのですが、 「マ ッ チ ング・グラント」 増すにつれ、 CGIARシステム全体に圧力がかかるようになりま モデ ルでは、CGIAR 全体の優先課題を支援するものかどうかと した。そのため、同グループが直面する問題に 取り 組む には、 は 無関係に、他のド ナ ー国が 拠出した金額と同額を 無差別に世 シ ス テム全体の対応、戦略、方針を 策定する必要性が 高まって 銀が マ ッ チ することになります。第二に、CGIAR 傘下の研究セ きました。その結 果 、1998 年に実 施 された 第 3 次 シ ス テム・レ ンターが、更なる資金誘致を実施し、ド ナ ーの要望をよりよく ビュー(TSR)では、CGIARを法人化して、IPR問題と官民パー 受け入れられるようにするための 奨励策として、CGIAR の「同 ト ナ ーシップに 取り 組む よう 提案されました。これは、地球環 意する研究アジェンダ」の定義が拡大され、従来のコア・アジェ 境ファシリティー や エ イ ズ ・結核・ マ ラリア・グローバル 基金と ン ダ (大半が 成果の 高い国際・地方公共財の研究活動)に ノ ンコ いった最近のグローバル・プログラムとは異なり、CGIARの組織 ア・アジェンダ(TACが優先課題とはみなしがたい、農業の現場 は、法的あるいは 正式に 認められた 事業体としての 特徴を 備え に近い活動がほとんどで、ド ナ ー国からの資金で 賄われる)が ていないうえ、憲章や、簡単な規約すらないためです。 加えられました。 CGIAR のメンバーはこの TSR の 提案を 1999 年に 棄却しまし たが、各理事会の 議長で 構成される CGIAR の 委員会と、各セ ン こうした 変化が 重なると、それまで独立した 立場で行って ターの所長から成る委員会は、2000年に、分権化されたセンター きた TAC の 科学 的 助言 が 次第 に影響力を 失 っていき、同 時 に の連合体を 形成するよう 共同で 提唱しました。この 2 つのプロ CGIAR の研究が 科学的根拠ではなくド ナ ーの 意向に 基づ いて 承 ポーザルは、分権化の程度こそ違っているとは言え、IPR問題に 認されるようになり、さらに、国際・地方公共財の創出というそ CGIAR シ ス テム全体で対応するためには、中央に 単一の 理事会 れまでの CGIAR の活動が国家サ ービ スや 自治体サ ービ ス の 提供 を 設けた 法人の 形成が必須であることを 共に 認めたものといえ へ と 変化していったのです。TAC は 元来、CGIAR で大きな 役割 ます。しかし、CGIAR 関係者の関心は 多岐にわたるため、足並 み をそ ろ えて行動を 起こすことは 難しく、この CGIAR の 抜本的 図3:90年代における世銀の農業向け貸付額の 機構改革もいま だ 実行されていません。CGIAR がま だ 数件の セ 大幅な低下 ンターで 構成され、現在程関係者が 多様化していなかった 頃に 全農業プロジェク 調査研究プロ 採択された設立当初の6つの原則では、もはや今日のような政治 ト向け ジェクト向け 色の 強い 承認過程や 、幅広い研究ア ジェ ン ダ 、メンバー 数の増 8,000 1,600 大に対応できなくなってきています(Box 2 参照) 。 7,000 全農業プロジェクト 1,400 CGIARは2000年以来、イアン・ジョンソン議長の統率のもと 向け で、ガバナンスと運営管理にテコを入れる4つの改革を導入しま 6,000 1,200 した。 「設計と管理の変革プロセス」と呼ばれるこの改革は、 (メ 5,000 1,000 ンバー国・機関から選出された 理事により 構成される)執行理 4,000 800 事会(Executive Council)及び統一事務所の設立、TACの科学理 調査研究 事会への改編、研究活動をプログラム単位で行う「チャレンジ・ 3,000 プロジェクト向け 600 プログラム」の導入で構成されています。 2,000 400 こうした改革の一部は確かな成果を期待できそうですが、修 正を要するものもあります。待つこと 久しい 執行理事会の 設立 1,000 200 は、CGIAR議長の功績として評価されていますが、OEDは、TAC 0 0 を 科学理事会に 改編しても、それ だ けで CGIAR 内で 科学的助言 1971 1973 1975 1977 1979 1981 1983 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 を独立した 立場で行う TAC の 役割を 強化できるかどうか 懐疑的 新規承諾額の推移(2000年価値 単位百万米ドル) です。これは、科学理事会が主として 科学的活動の 質について 出処:OEDデータ の助言を行う機能を持つだけで、優先課題の設定や資源の分配と いった重要な機能は、ごく限られたものであるためです。 4 World Bank Operations Evaluation Box 2: 貧困削減へのインパクトを維持する上で見直しを迫られているCGIARの6原則 ドナーの独立性 - ドナー国内の関係者らは多岐にわたる権益に関心を抱いており、この結果、メンバーが資金を拠出する際に、地域や研究 センター、プログラムを特定したり、自国の国民や研究機関に優先的に資金援助する傾向を助長してきました。こうした慣行は、CGIAR の 政治的支援の 幅を 広げることに 役立った一方、国際公共財の研究市場を 混乱させ、それまでの 長期的視野に 基づ いた 戦略的な研究活動 から、ド ナ ーの 短期的なア ジェ ン ダ と結び 付いた開発・ 情報普及活動へ とプログラムの全体的内容を 変化させる結果となりました。これ らの活動は、CGIARに比較優位のある立場を利用したものでもなければ、主力である能力を活かしたものでもありません。 研究センターの自治 - 16ヵ所の研究センターはそれぞれが独立した法人で、CGIARの組織の中で法人としての資格をもつのはこれらセン ターだけとなっています。各研究センターは各自が任命する理事会によって統治されています。こうした体制は、意見の分裂を招き、セ ンター間のラ イ バル 意識を 高め、理事数を 膨張させる(現在220 名)だ けでなく、理事会のアカ ウ ンタビリティと 質に対する 責任の所在 を不明瞭にし、協調して活動を実施することが難しくなっています。 コンセンサスによる意思決定 - 加盟国/機関の数を増大し、多様化することは、CGIARに対する「オーナーシップ」の幅を広め、民間セク ターや非政府組織(NGO )の声を反映させることにつながりました。しかし、これにより逆に、CGIAR の使命の遂行に関わるガバナン スや、組織、運営管理、財政面の問題について、メンバー間でコンセンサスを得ることが非常に難しくなっています。どのメンバーも事 実上、拒否権を行使できることから、こうしたメンバー間のコンセンサスの欠如が、重要な課題が決議に至らなかったときの言い訳とし て利用されるようになっています。 独立した技術的助言 - 使途に制約を設けた資金の増大で、この望ましい原則の土台が崩れ、優先課題の設定や人材資源の配分において、技 術諮問委員会(現在、暫定的に科学理事会に改編)が独立した立場から技術的助言を行う権限が低下しています。 非公式な組織 - CGIARでは、組織全体を司どる簡単な規約や、憲章、法的地位、定款などが設定されていないため、CGIARが一つの機関と して発言し、システム全体の方針や長期戦略を立案する能力を発揮できずにいました。最近新たに執行理事会を設置したものの、非公式 な組織であることが、科学分野のめざましい変化に対応し、民間セクターや知的財産権での役割を増し、アカウンタビリティや他の責任 の所在を明らかにする能力を阻んでいます。 政治色のない(超党的、非イデオロギー的)性質 - 幅広い使命を遂行するための資源を調達しようとすると、先進国と途上国の関係者の 間で異なる優先課題を主張し合うことになり、CGIARの政治色のない性質が損なわれています。 OEDはまた、システム・レベルの資金調達や、優先課題の設 の 議長も 兼任)や 、CGIAR の 理事、その 他CGIAR シ ス テムに携 定、科学活動の 質、ガ バ ナ ン ス といった、前回の CGIAR の評価 わる ESSD の ス タッフの 果す 役割の間で利害の対立が生じたり、 で浮上した問題点に取り組まないまま、チャレンジ・プログラム 世銀の 監視(CGIAR に関与する世銀の 副総裁以外の 部門による が実施されている点を指摘しています。そのため、OED は、ま 監視)が 不行き 届きであったために、CGIAR のリー ダ ーシップ ず は 科学理事会を 設置し、CGIAR 全体の優先課題を評価し、さ を 戦略的にとり、適切な 規模または 速さで 改革を行うよう 求め らにすでに承認済みの2つのチャレンジ・プログラムの設計・承認 る世銀の能力が 損なわれたと 言えます。特に、CGIAR の 議長に プロ セス の 徹底的なレビューが終了するまでは、新規の チャ レ とって、世銀や他のド ナ ーに 引き続き資金を 拠出するよう 説得 ンジ・プログラムの承認を控えるようCGIARに提案しています。 する一方で、大規模な機構改革の必要性を認め、その実施を迫る すでに 承認された チャ レン ジ ・プログラムをレビューすること という、弁護士と 判事の 両方の 立場を 担うことには問題があり で、今後 の チャ レン ジ ・プログラムの選 定 、設計 、実 施 順序 、 ます。 フ ェ ー ズ 分けを CGIAR のシ ス テム全体の優先課題や 戦略と 照ら し合わせて進める際の教訓を得ることができます。 今後の措置 世界銀行は、CGIAR の業務で 多数の 役割を 演じています。 機構改革のさらなる推進は ぜひ とも必要です。CGIAR の ガ バ ナ 世銀は、CGIARのシステム・レベルの会議を召集したり、資金を ン ス を 再編成することは、効率化を促進し、もっと厳しい優先 拠出するたけでなく、補完的な活動の資金を途上国に 提供する 課題の設定に必要なだけでなく、研究活動の正当性と「オーナー 貸付機関でもあります。その結果、世銀は、CGIAR の 後見人で シップ」を 犠牲にせ ず に優れた 科学的研究を 追及するうえで 不 あるとともに、そのシステムを一つにまとめ、16のCGIAR傘下 可欠です。CGIAR の 戦略上重要な優先課題は、国際的な研究課 の研究セ ンターの 果した 成果以上の結果を生み出すための “接 題の 変化にもっと積極的に 呼応す べ きです。そうしたうえで、 着剤”としての 役割も 果しています。他のド ナ ーは、こうした 植物の基礎的な交配や生殖質の改善にもっと重点を置き、CGIAR 世銀のリー ダ ーとしての 役割、財政的援助、業務上の支援など の比較優位のある分野での自然資源管理の研究を改善して、生産 を「承認の 証」と み なし、自信をもって CGIAR シ ス テム へ の 投 性向上と自然資源の持続的な利用に的を絞れば、途上国に恩恵を 資を続行しています。それでも、世銀の、環境及び社会的に持 もたらすことができるのです。 続可能な開発(ESSD)ネットワークを担当する副総裁(CGIAR 5 World Bank Operations Evaluation OEDによる提言は以下の通りです: れているかを監視したり、これについての報告書をメンバー に 提出したりするための 役割を同評議会に 課し、そのため • CGIAR の 組織構造、財務、運営管理面で 抜本的な 改革を 遂 に必要な資源を付与すべきです。 行するには、CGIAR の 設立当初のように、世銀が主導的な • CGIAR は、現在の 複雑に入り 組ん だ ガ バ ナ ン ス の 改革をは 立場にたって、最高レ ベ ルで一致協力した活動を推進す べ かるためのメカニ ズ ムを 取り入れると同時に、CGIAR 全体 きです。特に、ド ナ ーに対し、制約付き資金の 拠出傾向を を 統治する マ ネ ジ メント や組織の 役割、責任、及び アカ ウ 改め、制約のない資金の 割合を 高めるために 明確な目標を ンタビリティを 詳細に 明記した 憲章を 採択する べ きです。 設定するよう奨励すべきです。 CGIAR はまた、パ ート ナ ーシップ 形成の 潮流に対処するた • 世銀はCGIARの運営・管理に対するガバナンス責任を果たす め、CGIAR の一部または全体を 別途の 法人として 設立する べきです。このため世銀の中の監視と管理機能を分離し、世 ことが適切かどうか、プラ ス 面と マイナス 面の 両面から 分 銀が CGIAR で 果たしている様々な 役割とその利害の対立に 析すべきです。 対応し、世銀が CGIAR で 果す主な 役割に 矛盾が生じない 形 で監視すべきです。世銀は、現行の「マッチング・グラント」 以上の 改革が 遂行されれば、CGIAR へ の資金の増額を 求め モデ ルを 廃棄し、その 財政資源の 配分に際しては、科学理 る際の 強力な 根拠となります。この 中には、グラント資金を活 事会によって 規定された 長期的優先項目に 基づ いて、農業 用して地方公共財の提供から着手し、その後、国際公共財の支給 の生産性向上と貧困削減に 貢献する国際・地方公共財の研究 へ とつなげて貧困削減を実現することが 含まれます。世銀はま を長期的に支援すべきです。 た、途上国へ の 貸付機関として、特に サ ハ ラ 以南のアフリカ 諸 • CGIAR は、強力かつ適格で、独立した 科学理事会を 設立す 国を対象に、農業研究、教育、研修分野への貸付を増額して、国 ることに万全を期すべきです。また、それと同時に、CGIAR 家農業研究機関(NARS)のパフォーマンスを強化する必要があ 全体の優先項目や 方針、戦略を 確立し、さらにこれらの 措 ります。 置の 遂行に向けて、CGIAR の資源が適切に 配分され利用さ 世界銀行マネジメントの反応 世銀のマネジメントは、OEDの報告書に記述された提言のほとんどに同意した一方、こうした提言の多くはすでにCGIARの行動に反映さ れているか、あるいはその計画の中に盛り込まれている点を注記しています。また、マネジメントは、一部のドナーからの制約付き資金 がドナーの特定するプロジェクトに配分されたため、CGIARの研究センターの一部の活動が中核的な研究プログラムから逸脱したことに も同意しています。しかし “CGIAR の 焦点が 薄れた ”とする OED の主張はあまりに 漠然としたきらいがあるとしています。CGIAR は、 12~15年前に、外部専門家で構成される数件の国際パネルからの勧告を受け、投資家やクライアント諸国などの全面的支持を受けて、その 戦略上重要な研究範囲に 天然資源管理を 含む よう 拡大しました。その 反面、世銀の マ ネ ジ メントは、生産性向上の研究を 引き続き 重視す る必要性を認めたほか、研究の主眼を天然資源にも向けることは、各研究センターによる国際公共財の研究に水を差す恐れがあるとして 警告を発しています。特に各センターが地元の開発活動に大幅に関わるようになった場合はなおさらであるとしています。 一方、マネジメントは、世銀の果す様々な役割をめぐって関係者間で利害が対立し、また、世銀の監視が不十分であったために、世 銀がCGIAR において戦略的にリーダーシップをとれずにいる、とするOEDの指摘には同意していません。 その反面、世銀の監視機能 と運営管理機能を明確に区別すべきだとする点には賛成しています。また、CGIARの改革をさらに推進する必要性は認めながらも、現行 の 改革作業を 遅延させたり、その方向性を大幅に 変更す べ きではないとしています。また、単一の 法人を 設立する件については、以前 CGIARのメンバーによって棄却されましたが、世銀のマネジメントは、この事実を認識したうえで、CGIARの中心的監視機能と資金の配 分機能を担う単一法人の設立を改めて慎重に考慮するよう、有力なドナーと他の加盟国・機関に強く求めることに賛成しています。 Précis 232 6 世界銀行理事の見解 世銀の開発効果委員会(CODE )は、国際・地方公共財を 提供し、途上国での農業生産性を向上させてきた CGIAR の 功績を 称えましたが、 その一方で、CGIARが新たな課題を多数抱えていることに同意したほか、以下に記した分野において、CGIARの機構改革を実施すべきだ というOEDの提言に概ね支持を表明しました。 • 世銀は、CGIARの改革に向けた国際間の努力を主導し、制約の少ない資金をCGIARに提供するようドナーに奨励すべきです。しかし、 同委員会は、CGIAR の定義する“制約付き資金”と、一部ドナーから出されている開発ニーズと矛盾しない “所要条件”(例:アフ リカ優先)とを区別しています。 • 世銀は、監視機能と運営管理機能を世銀内で 分離することにより、内部で利害の対立が 起きているという 印象を与えないようにす べ きです。同委員会はまた、今後は世銀の上級副総裁 兼 チーフエコノミストが監視機能の責任を担うという発表に歓迎の意を表してい ます。 • CGIAR は、強力で独立した科学理事会を設立し、CGIAR システム全体の優先課題と戦略を設定する役割を同理事会に課し、またその ために必要な資源を付与すべきです。 • CGIARは、新規のチャレンジ・プログラムの承認を遅延し、まずは、現在実施中のパイロット・プログラムの初期の成果を見て、科学 理事会を設立すべきです。 • CGIARは、農業の生産性向上と国際・地方公共財の提供にもっと重点を置くべきです。 • CGIARは、文書による憲章を採択し、さらにCGIARを独立法人化する際のプラス面とマイナス面を分析し検討すべきです。CGIARが 直面する課題の多く(例:知的財産権や官民パートナーシップ)は、CGIARシステム全体で対応する必要があり、これまでのような 完全に分権化されたシステムでは解決が不可能です。 Recent OED Précis 231 ARDE 2002—Achieving Development Outcomes: The Millennium Challenge 230 The HIPC Initiative: Progress and Prospects 229 Evaluation Capacity Development: A Growing Priority 228 Building Biodiversity Governance Through Stakeholder Participation Director-General, Operations Evaluation: Gregory K. Ingram Acting Director, Operations Evaluation Department: Nils Fostvedt 227 High-Efficiency Lighting in Mexico Task Manager: Uma Lele 226 The Next Ascent: An Evaluation of the Aga Khan Rural Support This Précis is based on the The CGIAR at 31: An Independent Program Meta-Evaluation of the Consultative Group on International 225 Assisting Russia’s Transition: An Unprecedented Challenge Agricultural Research. 224 Grant Programs: Improving Their Governance 223 Supporting Health Reform in Eastern Europe The full text of the report is available at: http://www.worldbank.org/oed/gppp/ 222 Bolivia Water Management: A Tale of Three Cities 221 Bridging Troubled Waters: A World Bank Strategy Précis are available to Bank Executive Directors and staff from the 220 Cultural Properties in Policy and Practice Internal Documents Unit and from regional information service 219 ARDE 2001: Making Choices centers, and to the public from the World Bank InfoShop. Précis are 218 IDA’s Partnership for Poverty Reduction also available at no charge by contacting the OED Help Desk: 217 Community Forestry in Nepal eline@worldbank.org or calling 1-202/458-4497. 216 Promoting Environmentally Sustainable Development 215 Rural Water Projects: Lessons Learned DISCLAIMER: The views in this 214 Uganda: Policy, Participation, People paper are those of the Operations Evaluation staff and editors and 213 Developing African Capacity for Monitoring and Evaluation should not be attributed to the World Bank, its affiliated 212 Chile's Model for Educating Poor Children organizations, or its Executive Directors. 211 Strengthening Tunisian Municipalities to Foster Local Urban Précis aussi disponible en français Series Editor: Caroline McEuen Development Précis en español tambien disponible @ http://www.worldbank.org/oed Précis 232 The CGIAR at 31: Celebrating Its Achievements, Facing Its Challenges