日本社会 開発基金 ( JSDF) 年次報告 2006 年度 世界銀行 譲許性資金・グローバルパートナーシップ総局 日本政府 日本社会開発基金(JSDF) 年次報告 2006 年度 世界銀行 譲許性資金・ グローバルパートナーシップ総局 日本政府 i JSDF 運営委員会 委員長からのメッセージ 写真撮影:Michael Foley ii 日本社会開発基金(JSDF)が活動を開始してから 6 年になります。この間、日本政府からは当基金に 対し寛大にも 3 億 2000 万ドルの寄付をいただきました。当基金の下、これまでに 200 件を超えるグラン トが承認されています。JSDF は現在、途上国の恵まれない人々に直接の恩恵をもたらす革新的なアプロ ーチを支援する際に世界銀行が利用できる最も有効な投資の 1 つとして、極めて高い評価を得ています。 JSDF の柱となるのは、プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラントの両方を 支援する「通常プログラム」で、世界各地で地方政府、非政府組織(NGO)、シビルソサエティ組織(CSO) との協力の下、活動しています。こうしたグラントの多くは、きわめて革新的なアプローチにより社会 開発を支援しており、具体的にはインドネシアの未亡人グループの支援やセネガルにおける石鹸を使っ た手洗い習慣の促進、マリの幼児期育成イニシアティブ、カンボジアにおける障害児の教育機会拡大な ど多岐にわたっています。このプログラムは、革新的なアイディアを打ち出し、それを従来の世銀融資 による活動の枠組みの外で試験的に実行する開発専門家を提供するものです。JSDF の第一世代プロジェ クトはすでに完了し、また本年次報告には初めて、2006 年度に完了したプロジェクトに関する報告を記 載しています。審査されたグラントの 90% が「成功」または「大成功」と評価され、またグラントの持 続可能性については 16 グラントのうち 14 件が「有望」、「極めて有望」、「確実」と評価されたことは、 感銘深いことです。 JSDF の大きな強みの 1 つは柔軟性です。2000 年に創設されて以降、JSDF は新たに 4 つのコンポー ネントを設けました。シード基金グラントの設立は 2002 年に合意が得られ、以来、これらのグラント は社会から孤立したり無視されたりしている潜在的な受益者グループとの協議を促進するため現在頻繁 に利用されています。2002 年には、JSDF アフガニスタン支援のための特別窓口も設立されましたが、 これは今や JSDF の主要な機能となっており、9 件のグラントが承認され、5370 万ドルが充てられました。 2004 年 12 月には、インド洋の津波が大きな被害をもたらしたのを受け、日本政府は、津波被害復興プ ロジェクトへの JSDF グラントの利用を承認しました。津波の被害を受けた国々のうちの 5 カ国を支援 する 12 件のグラントが承認され、私自身も 2006 年 6 月にインドネシアのアチェ特別州を訪れて、これ らのグラントのうち 2 件がどんな成果を上げているかを確かめる機会に恵まれました。1 つはアチェの 町の若者たちが地域ラジオ放送局の設置を通じてコミュニティの人々の結びつきを再確立しようとする のを支援するものでした。もう 1 件は、破壊された家や事業の再建に際して漁村の未亡人を支援するも のでした。2006 年度、日本政府は、2005 年 10 月 8 日のパキスタン地震で障害者となった人々を支援す るために JSDF 資金の一層革新的な利用を承認することとし、4 件のグラント(総額 650 万ドル強)を 承認しました。 パキスタンの地震に対する 4 件のグラントはいずれも NGO が実施しています。NGO を実施機関と して活用していることは JSDF の際立った特徴の 1 つです。2006 年度に承認された 21 件のグラントの うち、13 件は NGO あるいは CSO が実施機関として関わりました。 iii 今では、JSDF プロジェクトから得られた多くの経験が蓄積されています。そうした経験やその経験 から得られた教訓を検証するのが適切でしょう。日本政府の支援により、外部の独立機関によるプログ ラム評価が行われており、2007 年度には、この評価の結果ならびに今日までの進捗状況を示す他の具体 的事例が、この年次報告に掲載の資料を含めて、プログラムを審査する際の基本的資料として活用され る予定です。 日本社会開発基金が社会から取り残された恵まれない人々の福祉に独自の貢献をしていることは既に 広く認識されています。私および JSDF 運営委員会メンバーは世界銀行を代表して、プログラムへの継 続的な力強い支援に対し日本政府に心からの謝意を表する次第です。 アリフ・ズルフィカー 世界銀行信託基金業務局長 兼 JSDF 運営委員会委員長 iv 目 次 JSDF 運営委員会委員長のメッセージ ii 略語 vii 第 1 章 序論と概要 1 JSDF の設立と目標   1 JSDF の 5 つのプログラム   2 2006 年度のプログラム概要   3 第 2 章 2001 年度から 2006 年度の活動 4 JSDF プログラム全体   4 JSDF 通常プログラム   5 JSDF シード基金   8 パキスタン地震グラント   9 アフガニスタン特別プログラム   12 津波被害復興グラント   12 第 3 章 JSDF 簡略化のプロセス 13 第 4 章 JSDF プログラムの進捗状況と効果 15 グラントの審査と承認   15 グラントの実施と報告   15 実施中の JSDF グラント   16 シード基金の影響   28 シビルソサエティ組織との協働   29 第 5 章 完了した JSDF グラントの検証 31 第 6 章 JSDF の管理とコミュニケーション 34 コミュニケーション・プロセス   34 JSDF についての詳しい情報   34 付表 1 2006 年度に承認された JSDF プロジェクト・グラントと キャパシティ・ビルディング・グラント 35 付表 2 2001 年度 ̶ 2006 年度の JSDF グラント地域別配分 37 付表 3 2006 年度に承認された JSDF シード・グラント 38 付表 4 2006 年度に承認されたパキスタン地震復興特別プログラム 39 v 付表 5 2006 年度に承認されたアフガニスタン特別支援 40 付表 6 2006 年度に承認された JSDF 津波被害復興グラント 41 付表 7 2006 年度に完了したグラント一覧 42 付表 8 2006 年度方針文書 45 図一覧 図 1  2001 年度 ̶ 2006 年度の拠出、配分、実行額   2 図 2  年度・種類別 JSDF グラント件数、2001 年度 ̶ 2006 年度   4 図 3  金額別・種類別 JSDF グラント、2001 年度 ̶ 2006 年度   5 図 4  種類別の通常プログラム・グラント件数、2001 年度 ̶ 2006 年度   6 図 5  2006 年度通常プログラム・グラントの地域別配分    (総額に占める割合)  6 図 6  2006 年度通常プログラム・グラントのセクター別配分      (総額に占める割合)  7 図 7  アフガニスタン農村インフラ・サブプロジェクト   18 囲み一覧 囲み 1   JSDF プロジェクトに求められる特徴   1 囲み 2   パキスタン:障害を抱えた人々の自立した生活の促進   10 囲み 3  パキスタン:障害を抱えた人々のコミュニティ・ベースの    リハビリテーション(CBR)  11 囲み 4   アフガニスタン国家連帯プロジェクト   16 囲み 5   エクアドル:貧困層のための法と司法   21 囲み 6   ロシア農村部の地方ガバナンスと市民参加   24 表一覧 表 1  本書でとり上げるプロジェクト一覧   16 表 2  2006 年 8 月時点での JSDF 対象領域における実施・進捗状況   18 表 3  2006 年度に承認されたグラント・プロポーザルの受領者別内訳   29 表 4  2006 年度に承認されたグラント・プロポーザルの実施機関別内訳   29 vi 略 語 ADR Alternative Dispute Resolution 裁判外紛争解決手続 AFR Africa Region アフリカ地域 CBOs Community Based Organizations コミュニティ・ベースの組織 CBR Community-Based Rehabilitation コミュニティ・ベースの支援サービス CDCs Community Development Councils コミュニティ開発会議 CDD Community Driven Development コミュニティ主導型開発 CN Concept Note  コンセプト・ノート CSOs Civil Society Organizations シビルソサエティ組織 EAP East Asia and the Pacific 東アジア・大洋州地域 ECA Eastern Europe and Central Asia 東欧・中央アジア地域 ERR Economic Rates of Return 経済的収益率 FY Financial Year 会計年度 GRM Grant Reporting and Monitoring グラント報告・モニタリング ILCs Independent Living Centers 自立生活センター ILP Independent Living Program 自立生活プログラム GoJ Government of Japan 日本政府 JSDF Japan Social Development Fund 日本社会開発基金 LAC Latin America and Caribbean Region ラテンアメリカ・カリブ海地域 MNA Middle East and North Africa 中東・北アフリカ地域 MICs Middle-income Countries 中所得国 NGOs Non Governmental Organizations 非政府組織 NSP National Solidarity Program 国家連帯プログラム PCP Peer Counseling Program ピアカウンセリング・プログラム PHC Primary Health Care プライマリー・ヘルス・ケア SAR South Asia Region 南アジア地域 SC Steering Committee 運営委員会 TFO Trust Fund Operations 信託資金オペレーション TTLs Task Team Leaders タスクチーム・リーダー vii ADR Alternative Dispute Resolution 裁判外紛争解決手続 AFR Africa Region CBOs Community Based Organizations コミュニティ・ベースの組織 CBR Community-Based Rehabilitation コミュニティ・ベースの支援サービス CDCs Community Development Councils コミュニティ開発会議 CDD Community Driven Development コミュニティ主導型開発 CN Concept Note コンセプト・ノート CSOs Civil Society Organizations シビルソサエティ組織 EAP East Asia and the Pacific 東アジア・大洋州地域 ECA Eastern Europe and Central Asia 東欧・中央アジア地域 ERR Economic Rates of Return 経済的収益率 FY Financial Year 会計年度 GRM Grant Reporting and Monitoring グラント報告・モニタリング ILCs Independent Living Centers 自立生活センター ILP Independent Living Program 自立生活プログラム GoJ Government of Japan 日本政府 JSDF Japan Social Development Fund 日本社会開発基金 LAC Latin America and Caribbean Region MNA Middle East and North Africa 中東・北アフリカ地域 MICs Middle-income Countries 中所得国 NGOs Non Governmental Organizations 非政府組織 NSP National Solidarity Program 国家連帯プログラム viii 第1章 序論と概要 JSDF の設立と目標 JSDF は日本政府と世界銀行により 2000 年 6 月に設立されま した。設立当初の目的は、1990 年代後半に起こった東アジア金 融危機の深刻な影響に対処することでした。その後、拡張されて、 途上国で最も不利な立場にある人々を直接支援するための革新的 なアプローチを提供する主要な基金となりました。 合意によって定められた JSDF の目的は: 世界銀行グループの融資適格国の貧困緩和に役立つ革新的な 社会的プログラムを支援するグラントを提供することです。 この目的を達成するために、JSDF はさまざまなプロジェクト において途上国の中央政府と地方政府、NGO や CSO を支援し ています。これらすべてのプロジェクトにはある一定の基本的な 。 基準を満たすことが求められています(囲み 1 を参照) 囲み 1 JSDF プロジェクトに求められる特徴 JSDF プロジェクトでは以下のことが求められている。 • 革新的であること─つまり、開発に新しいアプローチやアイディアを導入するもの であること。まったく新しい試みの場合もあれば、対象国にとっては新しいが、す でに別の国で成功しているアイディアを導入するものの場合もある。 • 恵まれず、弱い立場にある、あるいは不利な立場に置かれた人々のニーズに直接応 えるものであること。地理、性別、年齢、民族、身体状況など、さまざまな面で弱 い立場の人々が対象となる。 • 対象となる人々に適度に速やかで実証可能かつ持続的な恩恵をもたらすものである こと。JSDF は、対象となる人々に便益を提供するのに何年もかかるようなプロジェ クトは支援しない。 • 現地の政府、NGO、CSO のキャパシティ・ビルディングに努め、弱い立場の人々 へのエンパワーメントとなり、プロジェクト活動に関係者の参加を促すものである こと。 1 図 1 2001 年度 ̶ 2006 年度の拠出、配分、実行額 100,000 拠出 配分 実行 90,000 80,000 70,000 単位 60,000 50,000 千ドル 40,000 30,000 20,000 10,000 0 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 日本政府は 2006 年度末までに JSDF に対し 3 億 2000 万ドルを拠出しました。プログラムの開始以来、 215 件のグラント(総額 2 億 2700 万ドル)が承認されました。図 1 が示すとおり、JSDF プログラムは 全体としては過去 6 年間に徐々に、しかし着実に拡大してきました。実行額は、当初何年かは伸びが鈍かっ たものの、2006 年度には 3500 万ドルを超えました。しかし、新規プログラムへの配分は 2003 年度の レベルに近い 3400 万ドルでした。2006 年度には、パキスタンでの地震を受け、日本政府はパキスタン の復興を支援するために、JSDF を通じて多額のグラントを提供しました。さらに、日本政府は、2004 年の津波被害からの復興に取り組む国々への援助を続けると共に、アフガニスタンではキャパシティ・ ビルディングのために追加資金を拠出しました。 JSDF の 5 つのプログラム JSDF グラントは 5 つの異なるカテゴリーに分かれています。 • 通常プログラム・グラント:恵まれないコミュニティに直接恩恵をもたらす革新的なプログラムを導 入することをめざすプロジェクトまたはキャパシティ・ビルディング・グラントに資金を提供する。 • シード基金グラント:少額グラントとして、通常のプログラム・グラント、特に対象となる受益グルー プとの協議を促進するグラントのプロポーザル作成を支援する。対象となる受益グループは遠隔地に 居住する場合もあれば、広範な地域に分散している場合もある。 • アフガニスタンにおいて、さまざまな開発活動やキャパシティ・ビルディング活動を支援する特別グ ラント。 • 2004 年 12 月 26 日に発生したインド洋大津波の被害からの復興活動を支援する特別グラント。 • 2005 年 10 月にパキスタンで発生した地震の被害を受けた地域を復興・再生するための特別グラント。 2 2006 年度のプログラム概要 2006 年度は、合計 1520 万ドルに上る 11 件のプロジェクトが通常プログラムの下で承認されました。 うち 7 件はプロジェクト・グラント、4 件はキャパシティ・ビルディング・グラントでした。また、パ キスタンには復興活動の一環として地震被害者を支援するために 650 万ドルのグラント(4 件のプロジェ クト合計)が拠出されました。さらに、アフガニスタンは、国家連帯プログラムの活動への支援として 1500 万ドルを受け取りました。加えて、津波被害国には、主に漁業セクターの再建のための 4 件のプロ ジェクトを支援するために 600 万ドルが追加で拠出されました。 2000-2002 年に供与された多くのグラントが終了したのを受け、JSDF プログラムの検証作業が始ま りました。その目的は概ね次のようにまとめることができます。 • JSDF の今日までの進捗状況と開発面での効果を検証する。 • JSDF の目標に照らして、グラント全体および特定のグラントの実績を評価する。 • JSDF が将来さらに効果的に目標を達成することができるよう勧告を行う。 評価チームは 2006 年 12 月に検証結果を報告する予定です。 3 第2章 2001 年度から 2006 年度の活動 JSDF プログラム全体 図 2 と 3 は、JSDF プログラムが 2001 年度以降、どのように 規模と範囲を着実に拡大してきたかを示しています。図 2 から、 承認された JSDF グラント件数は 2001 年度と 2002 年度は 26 件 から 31 件の間にあり、2003 年度と 2004 年度は年間 40 件まで増 加し、2005 年度には 50 件を超えたものの、2006 年度には 26 件 まで減少したことが分かります。2006 年度に件数が減少したのは、 通常のプロポーザルの提出が減ったのに加え、シード基金への需 要が減少したことによるものです。 図 3 はグラントを「金額」の点から見た場合、状況がどのよう に変わるかを示しています 1。通常プログラム・グラントは、 2001 年度の 3000 万ドル強の水準からスタートし、2002 年度と 2003 年度は大幅に減少、2004 年度には 2001 年度の水準に回復し、 図 2 年度・種類別 JSDF グラント件数、2001 年度 ̶ 2006 年度 60 パキスタン シード基金 津波被害復興 アフガニスタン 通常プログラム 50 40 グラント件数 30 20 10 0 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 1  図 3 の承認されたグラントに関するデータは図 1 の「配分」に関するデータとわずかながら異なる。承 認されたグラント(図 3)は、日本から承認が得られる年に記録されるのに対し、配分は、その後口座 (Accounts)により記録される。また、6 月に承認されたグラントが翌会計年度である 7 月までは配分 として記録されないこともある。 4 図 3 金額別・種類別 JSDF グラント、2001 年度 ̶ 2006 年度 70,000 パキスタン シード基金 津波被害復興 アフガニスタン 60,000 通常プログラム 50,000 40,000 単位 千ドル 30,000 20,000 10,000 0 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 2005 年度には 4000 万ドル以上へと急増しました。アフガニスタン特別グラントは、件数は少ないので すが金額は極めて大きく、2004 年度の増加分の多くを占め、2005 年度と 2006 年度も大きな割合を占め ています。津波被害復興グラントは 2006 年度には 2005 年度の水準の半分でしたが、パキスタン再建プ ログラムを支援する緊急グラントと合わせると 2005 年度の水準に達しました。 JSDF 通常プログラム JSDF 通常プログラム・グラントには大きく分けて 2 つの種類があります。 • プロジェクト・グラント:貧困層に直接救済措置を提供する活動、あるいは特に社会セクターにおけ る革新的試みや新しいアプローチの試行を支援するもの。プロジェクト・グラントでは、コミュニティ の開発に現地住民の参加を促進するコミュニティ主導型開発(CDD)のアプローチがよく用いられま す。JSDF グラントは、単独のプロジェクトの資金として提供されることもあれば、世銀グループな どの資金を得てより大規模に再現される可能性のあるパイロット活動の資金として提供されることも あります。 • キャパシティ・ビルディング・グラント:特に NGO や CSO、地方政府のキャパシティ強化・育成活 動に資金を提供するもの。このグラントは、現地のコミュニティや地方政府、地方機関、NGO など を強化し、地方政府とコミュニティの協力を促し、コミュニティの意志決定や説明責任を改善するた めに使用されることもあります。 プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラントのどちらも、2005 年世界開発報告 の定義による低所得国と低位中所得国を対象としています。 5 図 4 種類別の通常プログラム・グラント件数、2001 年度 ̶ 2006 年度 30 プロジェクト・グラント キャパシティ・ビルディング・グラント 25 20 15 10 5 0 2001年度 2002年度 2003年度 2004年度 2005年度 2006年度 図 4 は、2001 年度以降、2 種類のグラントがどのように配分されてきたかを示しています。2006 年 度はプロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラントのいずれも急減していますが、 プロジェクト・グラントの方が大幅に落ち込んでいます。 JSDF は協定により、「JSDF 基金総額の約 50% は東アジア、南アジア、中央アジアの適格国に配分す る」ことが求められています(付表 8 を参照)。図 5 と付表 1 は、2006 年度 は JSDF がこの目標に届か 図 5 2006 年度通常プログラム・グラントの地域別配分(総額に占める割合) 南アジア地域 (9%) 140万ドル アフリカ地域  (27%) 410万ドル ラテンアメリカ・ カリブ海地域 (19%) 290万ドル ヨーロッパ・ 東アジア地域  中央アジア地域 (20%) 300万ドル 380万ドル(25%) 6 図 6 2006 年度通常プログラム・グラントのセクター別配分(総額に占める割合) マルチセクター: 農業・漁業・林業 社会的保護、リスク管理 21% 23% 教育 9% 保健その他のサービス 4% マルチセクター: ジェンダー、 社会開発、 参加 43% ず、東アジア、南アジア、中央アジア(カザフスタン)に配分された資金が約 40% にとどまったこと を示唆しています。しかし、2001 年度 -2006 年度までの期間を通じてみると、目標は優に達成され、 グラントの 50% 強(9300 万ドル) を東アジアと南アジア向けだけで占めていたことがわかります。付 表 2 は JSDF グラントの地域別配分を示しています。 図 6 は、2006 年度通常プログラム・グラントのセクター別配分を示しています。JSDF が社会開発を 重視したものであることを考えれば、グラントの実質 3 分の 2 がジェンダー、社会的統合、社会的保護、 リスク管理などの分野をカバーする「社会的マルチセクター」に分類されていることも意外ではありま せん。ほかにも重要なセクターとしては、農業、漁業・林業、教育があります。 2006 年度に承認されたプロジェクトのいくつかの特徴は注目に値します。 • 日本が承認した 11 件のプロジェクトのうち 4 件は子供や若者を対象としたものです。インドネシア の特に貧しい子供たちのための教育を支援するプロジェクトは、経済危機に加えて農村部に暴力が蔓 延しているため多くの学校が活動中止や停止に追い込まれるなどの影響を受けてきた極めて貧しいコ ミュニティにおいて、初頭・中等教育の就学状況と成績を好転させるでしょう。ホンジュラスの子供 や青年のための革新的な基金は、弱い立場で危険にさらされている子供や青年、特に HIV/ エイズの 影響を受けている者や特に貧しい状況で障害を抱えながら暮らしている子供や青年を対象とする革新 的なプロジェクトを実施している NGO やコミュニティ・ベースの組織、その他のコミュニティ支援 組織に資金供与するものです。ケニアでは、グラントが、開発プロセスにおいて若者の社会的統合、 参加、エンパワーメントを強化することになるでしょう。それは、経済的自立、生活のスキルや福祉 の問題に取り組み、若者たちをエンパワーメントして指導者の地位につけるようにするものです。そ して十分なサービスを受けておらず不利な立場に置かれた若者たちを対象とし、男女平等を重視した プログラムを設計します。トルコの子供や若者を対象とした革新的な基金は、弱い立場で危険にさら されている子供や青年、特に HIV/ エイズの影響を受けている者や特に貧しい状況で障害を抱えなが ら暮らしている子供や青年の状況を改善するでしょう。 7 • 農村コミュニティの暮らしの改善を図る持続可能なモデルの開発のため、多くのプログラムが実施さ れてきました。例えば、インドネシアのプロジェクトは、農村住民が暮らしを改善する知識や情報、 通信手段を利用できるようになるのに役立つでしょう。他にも、農村住民のキャパシティ・ビルディ ングや所得の向上に寄与するプロジェクトもあります。グアテマラの場合には、専門家の援助や先住 民コミュニティの訓練を通じて雇用機会の改善、所得向上、インフラ・アクセスの拡大、社会の進歩 から取り残された状態の改善などのためにキャパシティ・ビルディングが図られるでしょう。これら の活動は、先住民の暮らしと参加型計画立案能力を向上させるために先住民のキャパシティを強化す るものです。インドのオリッサ州では、貧しい非正規労働者の所得を向上させ、貧困を削減するため のパイロット・プロジェクトが実施される予定です。これにより、社会の弱い立場に置かれたセクショ ンのために手織機や養蚕、薬用植物を中心とする持続可能な生活支援システムの開発が容易になるで しょう。カザフスタンにおけるコミュニティ・ベースのアラル海漁業管理プロジェクトは、漁村の生 活状態と相互のコミュニケーションを改善し、環境悪化を抑制するでしょう。それはまた、魚燻煙技 術の向上ならびに女性商人の所得と暮らしを改善するための販売協同組合設立の両面でパイロット活 動を支援することにもなるでしょう。 • 性と生殖に関する健康もまた繰り返し持ち上がるテーマです。エチオピアでは、新しい JSDF プロジェ クトが、性と生殖に関する健康とリスク問題についての知識を普及させると共に、保健その他の基本 的な社会サービスへのアクセス改善を目指す現地の交通問題解決策を確認し実施しようとしています。 ギニアでは、家族計画や HIV/ エイズ診療を普及させるために既存の回旋糸状虫症対策コミュニティ 世話人ネットワークを活用する構想を試験的に実施するプロジェクトが承認されました。これは、農 村における性と生殖に関する健康に関連する情報とサービスへのアクセスの改善に寄与するでしょう。 • フィリピンのキャパシティ・ビルディング活動は、貧困率が高い地域に基本的サービスを提供する際 の NGO の説明責任と効率を強化するでしょう。 JSDF は革新性を特に重視しており、2006 年度の新規グラントは依然、これが重要な特徴であること を示しています。例えば、上述のギニア・プロジェクトは、性と生殖に関する健康を回旋糸状虫症対策 プログラムと統合し、その結果、性と生殖に関する健康情報へのアクセスの加速をもたらすという点で 極めて革新的であると言えるでしょう。ケニア青少年育成事業の革新的な特徴としては、社会から取り 残された若者たちの暮らしを改善する活動を含むさまざまな活動を支援する青少年育成組織に資金を提 供するグラント作りプログラムがあります。それはまた、若者のコミュニティ開発への参加と一体化を 促進するのに役立つコミュニティ主導型開発アプローチを試験的に利用することにもなるでしょう。 JSDF シード基金 JSDF プロジェクトは、社会から取り残されたり、不利な立場に置かれたりしているコミュニティを支 援することを意図しており、プロジェクト・プロポーザルが審査される際には、対象となる受益者と協 議が行われプロジェクト設計に関与したことが明らかになっていなければなりません。首都圏の都市か ら遠く離れていることもあるコミュニティとの参加型協議のプロセスを促進するには特別の資金配分が 必要となります。このような背景から、日本政府は 2002 年 3 月にこのプロセスを促進するための特別基 金を設立することに同意しました。5 万ドル未満のグラントが、JSDF への申請を準備中で、参加型活動 を組織するために資金を必要とする世銀チームに提供されます。 8 シード基金グラントはグラント承認後 12 カ月以内に使用されることになっているため、完全な JSDF プロポーザルが提出されるのは、シード資金の承認からおよそ 1 年後になります。 2002 年度以降、53 件のシード基金グラントが承認されました。このうちアフリカを対象としたもの が 22 件と突出して多く、16 カ国がこのシード基金グラントの恩恵を受けています。ほかにシード基金 グラントの利用が多かった地域は、東アジア・大洋州(EAP)、ヨーロッパ・中央アジア(ECA)でした。 3 件以上のシード基金グラントを利用した国はインドネシアだけでした。 付表 3 は 2006 年度に承認されたシード基金グラントの一覧です。同年度中に承認されたシード基金 グラントは 5 件でした。シード基金グラントが地理的にも、また専門分野の点でも広い範囲にわたって 利用されていることがわかります。中東・北アフリカ(MNA)を除くすべての世界銀行の地域において、 シード基金グラントが利用されました。複数のグラントを受けた国はありませんでした。対象となった テーマは、マラウイにおける保健セクターの説明責任を促進するためのツールとしての語り聞かせから、 アルメニアとベトナムにおける市民とコミュニティの関与、ハイチとドミニカ共和国におけるコミュニ ティ災害管理、さらにはロシアの司法制度における社会的説明責任と透明性の強化など、多岐にわたり ました。 パキスタン地震グラント 2005 年 10 月 8 日朝、マグニチュード 7.6 の大地震がパキスタンで発生し、世界でも特に辺鄙な山間 部の村々とパキスタンでもとりわけ貧しい地域に甚大な被害をもたらしました。特に被害が深刻だった のは、北西辺境州のアボッタバード、マンセーラ、バタグラム、シャングラ、バラコト、コヒスタンの 各地区、アザド・ジャム・カシミール州のムザハラバード、バーグ、プーンチ(ラワラコット)、さらに 首都イスラマバードなど広範な地域です。最も被害がひどかったマンセーラ、ビシャム、ムザファラバー ド、バードなどの 4 つの地区は完全に破壊されました。パキスタン政府の発表によれば、7 万 3000 人以 上が死亡し、7 万人以上が重傷を負うか障害者となりました。280 万人以上の人々が家をなくしました。 被害の 85% は農村部におけるものでした。 地震発生は土曜日の朝、午前 8 時 55 分だったので、子供たちはすでに登校していました。死者と負傷 者には、膨大な数の児童たちが含まれていました。推定 1 万 5000 人が手足を切断される、あるいは重度 の脊髄損傷を負って身体が麻痺して動けなくなりました。麻痺 / 切断という重傷を負った人は推定 1 万 5000 人に上ります。さらに、実に多くの人々が頭部や脊柱を損傷したり、心に傷を負ったりしました。 今回の地震で新たに障害者となった人々の割合が高いだけでなく、既に障害を抱えていた人々も、経済 的支援の面で頼りにしていた家族など、自らをサポートしてくれるシステムの多くを失うことになりま した。地震の影響と共に、事前のセーフティーネットが欠如していたことで、特に身体障害者にとって、 長期的な復興に向けた外部からの援助が必要となりました。 世界銀行は、アジア開発銀行と共に、破壊されたインフラストラクチャーと 38 億ドルに上るその再建 を対象に「損害とニーズのアセスメント」を実施しました。この中で社会的損害も評価の対象に加えら れました。2005 年 11 月 19 日にイスラマバードでドナー会議が開かれ、救済と復興に 60 億ドルを投じ ることが誓約されました。そのほとんどすべては物的インフラの緊急復興と長期的な再建に充てられ 9 るものでした。この会議で、日本政府は、500 万ドルの JSDF プログラムでは障害者を対象とするこ とを発表しました。 日本政府は、誓約した金額を超え、JSDF プログラムを通じてこれまでに 650 万ドル以上を拠出して います。現在までに、4 件のグラントが承認されています(付表 4 を参照)。JSDF プログラムの資金を 受けたプロジェクトのうち 2 件が囲み 2 と 3 に記されています。 囲み 2 パキスタン:障害を抱えた人々の自立した生活の促進 コンポーネント A. 自立生活センターの設置 • マンシェラ、ビシャム、ムザファラバード、バーグなど地震で最も大きな被害を受けた地域の行政センター 内に、障害者のために障害者自身がスタッフとして配置され組織する、居住用ではない自立生活センター (ILC)を設置する。このセンターでは、障害者が自分たちの暮らすコミュニティに溶け込みかつ豊かで生産 的な暮らしを送るのに必要なスキルを伸ばせるように、自立生活プログラム(ILP)、ピアカウンセリング・ プログラム(PCP)、付き添いサービス・トレーニングによる訓練を行う。 • ILC 内に障害者に配慮した傾斜路の設置やトイレを作るなど、小規模な作業を遂行する。 • ILC のスタッフの採用。大半は障害を持つ人々とし、男女比や、地震のせいで障害者になった人々の採用を 重視する。 コンポーネント B. ILP、PCP、付き添いサービス・トレーニングの実施 • 最近障害者となって人を含め、障害者が、特に自分たちの暮らしているコミュニティに溶け込めるようにす ることを目指して、自立した生活スキルを身につけるのを支援するために、ILP や PCP で障害者たちに訓練 を施す。 • 重度の障害を持つ人々に訓練や付き添いサービスを提供する。 コンポーネント C. 自立した生活とバリアフリー環境のための支援プログラム • 障害者のコミュニティにおける自立した生活とバリアフリー環境を奨励するために、ILC とその周辺で市民 参加キャンペーンやセミナーを実施する。 コンポーネント D. プロジェクト促進事務局 • プロジェクト活動を調整し、文書化し、普及させるために既存の「特別な人々のための画期的社会」事務局 を強化することを通じて、プロジェクト促進事務局を設置する。 • スタッフの管理と雇用のためのコストを含め、プロジェクトの管理・支援活動を行う。 10 囲み 3 パキスタン:障害を抱えた人々のコミュニティ・ベースのリハビリテーション(CBR) コンポーネント A. CBR リソース・センターの設立 • 地震による被害が最も大きかった地域の障害者へのサービスを開発・強化・拡充する中心として機能するた めに、障害者とその関連組織を対象に講習会を開く施設を持つ CBR リソース・センターのネットワークを 確立する。この活動の内容は、障害者がサービスや情報を利用できるようにすること、通常の社会活動に参 加できるよう個々人のニーズと方法を見きわめるなど、障害に関する知識を深めることによって自らの属す るコミュニティに溶け込めるよう促すこと、地震後の補償を得られるよう支援すること、入居しやすい住宅 の建設や必要な住居改修に際して地震の被害者に技術協力を提供すること、生計を立てるためのスキルを身 につける訓練を行うことなどです。 コンポーネント B. CBR 従事者の確認とキャパシティ・ビルディング、 障害者への CBR サービスと解決策の提供 • 障害者とその家族、介護者にリハビリ支援を行うことができるよう訓練を受けた人々のネットワークの一員 となるべきコミュニティの従事者を確認する。障害者が自立しコミュニティに溶け込む際の障壁を取り除く 適切な方策を見つける。基本的なリハビリ、心理・社会的支援の手法と利用しやすさに関する基礎知識を身 につけるようその他の現地コミュニティ従事者を訓練する。 • 地震後の補償イニシアティブや政府の政策など障害者に関連のある情報についての情報を広める「知識銀行」 としての渉外担当者の採用。 • コミュニティの従事者が「取り込みベクトル」の役割を果たし、障害者を識別し共に働き、個々のニーズと 優先事項を定め、ベストプラクティス・サービスに導き、その他の地域の関係者を訓練し、コミュニティへ の取り込みについて意識を高めることができるよう訓練する。 • 障害者も参加する形で CBR リソース・センターを通じて障害への意識を高める資料を作成し、講習会を行う。 障害者の取り込みと再建プロセスへの参加に重点をおいた、文化的・言語的に適切なマニュアルの作成もそ の一環である。 コンポーネント C. コミュニティ・ベースの組織(CBO)への技術協力とサブグラントを通じた CBR サービスの強化 • CBO への技術協力の提供。これには、CBR リソース・センターの専門家や文献、訓練を活用することで、 既存の CBO ネットワークを強化し、障害者に提供する活動とサービスの範囲の拡大および質の向上のため に CBO ネットワークのパートナーを支援することも含まれる。 • 参加促進型立案プロセスを通じて復興・再建活動を行うサブプロジェクトを実行するために特定の CBO に サブグラントを提供する。これらの活動は、特に障害への物理的ならびに態度面の障壁を除くと共に、障害 者を経済・政治・社会・文化面の活動などコミュニティ活動に参加させることに重点を置くものとする。他 の活動としては、CBO の既存の復興活動や障害者のリハビリテーションのための包摂的アプローチの開発・ 実施などがある。 11 アフガニスタン特別プログラム 2002 年以来、JSDF はアフガニスタン政府の積極的な開発パートナーとして、政治・社会・経済の再 建に伴う膨大な難題に取り組むのを支援してきました。2002 年 3 月にアフガニスタン向けに設置された 特別支援枠を通して、JSDF グラント資金は、世銀の支援による同国政府の国家再建と開発努力を補い、 強化してきました。 2006 年度には、JSDF 特別プログラムの下、アフガニスタン向けに 2 件の新しいグラントが承認され ました(付表 5)。2 件で総額計 1500 万ドルのグラントがコミュニティ・レベルの統治を強化するため の基盤構築を狙いとする国家連帯プログラム(NSP)に対する本グラントを補足することになります。 このグラントはコミュニティが自ら管理するサブプロジェクトを支援して、300 の村落が生産的な社会 インフラにアクセスできるようにするものです。追加グラントの 1 つは、対象範囲を 7 地区 300 村から 14 地区 1118 の村に拡大します。もう 1 つの追加グラントは、非合法武装グループの武装解除を無事完 了させた国内の特定コミュニティに資金を提供するものです。 これら 2 つのグラントにより、アフガニスタン特別支援プログラムの下で資金供与されたグラント総 数は 9 件に、また同プログラムに配分された資金総額は約 5200 万ドルへと増えることになります。 津波被害復興グラント 2004 年 12 月 26 日、強力な海底地震が津波を引き起こし、多くのインド洋諸国の沿岸に恐るべき被 害をもたらしました。この大災害に対し、世界中からかつてないほどの支援の手が差し伸べられました。 過去に何度も津波を経験している日本も、ただちに長期的復興援助を申し出ました。JSDF もひとつの援 助手段として活用されています。 日本政府は、津波の被害を受けた国々における再建措置を直接的に講じる活動や、貧困層へのサービ スや施設の改善をめざす活動の資金として JSDF グラントを利用することに同意しました。日本政府は また、この例外的な状況の中、JSDF グラントの利用を促進するため、JSDF グラントに通常設けられて いる利用制限を一部緩和することに同意しました。その結果、どの津波被災国もグラントを申請するこ とができ、また現在実施中のグラントへの追加としても、新規のグラントとしても、プロポーザルを提 出できるようになりました。さらに、必ずしも既存の世銀プロジェクトを補完するものでなくてもよく、 通常の JSDF 申請ラウンドを待たなくても緊急もプロポーザルを検討することが可能となりました。 2006 年度末までに、12 件の津波被害復興グラントが日本政府の承認を受けました。これらのグラン トは、津波被災国のうちインドネシア、モルディブ、スリランカ、タイ、ソマリアの 5 カ国に対するも のです。2006 年度に提供されたグラントの詳細は付表 6 に示されています。 12 第3章 JSDF 簡略化のプロセス JSDF のプロセスを簡略化する大規模なイニシアティブは 2006 年度に完了しました。その目的は、世銀のタスクチームと受領国 がより効果的に資金を入手できるよう手続きを合理化することに ありました。このプロセスが意図した効果は、以下のようなもの でした。 • プロジェクトとキャパシティ・ビルディングのために、受領国 へのグラント供与を促進する。 • グラントの処理に携わる世銀スタッフの負担を減らす。 • グラントの調印と発効の遅れを短縮する。 • グラントの生産物より成果を重視する。 主な生産物は以下のようなものでした。 • プロセスはまず、申請されたグラントに関する重要な情報を提 供するコンセプト・ノート(CN)からスタートする。タスクチー ム・リーダー(TTL)は、信託基金業務部(TFO)から CN 草案の決済を求める。TFO が許可すれば、TTL は、技術協力 よりも戦略的なコンテクストを重視する、簡素化されたグラン ト申請書式を使って、グラント・プロポーザルを提出する。 • 資金の申請が行われると標準的なグラント契約が自動的に作成 されるので、法務担当チームの仕事量は大幅に軽減される。 • グラント契約を頻繁に修正しなくてもよいよう、経費項目は簡 素化されている。 • グラント契約調印時に標準化された実行書ができている。資金 プロポーザルには、提案されている監査方式についても記述さ れている。 • プロポーザル文書の各部分に掲載されているコスト表は互いに リンクされているので、項目の 1 つが変更されたときには、す べてのコスト表が自動的に更新される。 13 • 詳細なコスト表には、今では調達計画のための欄が設けられている。 • プロジェクト期間を通していた手続きはすべて一箇所、すなわち「JSDF グラント文書処理手続き」 に記載されている。 • プロポーザル募集から日本への提出までの処理期間は、通常 12 週間である。 • グラント・プロポーザルの標準化を拡大する基盤を構築する。 • TFO はもはや、グラント開発目標に変更がない限り、再配分の要請許可を担当しない。 簡素化された処理手続きは、広く歓迎されました。現在、プロポーザルとして推奨されている長さは 10 ページです(ワンページ・グラント・プロポーザルとグラントの補足的情報を含める)。 14 第4章 JSDF プログラムの進捗状況と効果 グラントの審査と承認 JSDF グラントのプロポーザルはまず技術審査官によって吟味 され、それぞれの国の弁護士と会計官、世界銀行国別担当局長と セクター・マネージャーならびに地域の信託資金調整官によって 確認されます。次に、プロポーザルは世界銀行 JSDF 運営委員会 がプロポーザルを審査し、最小限の手直しを加えた後に日本へ提 出されるか、一旦タスクチームに戻し修正後に再提出を求めるか、 あるいは却下されます。運営委員会は、JSDF の基準を満たした プロポーザルを日本政府(GOJ)に提出し、最終承認を待ちます。 日本政府(財務省)は、申請されたプロジェクト・プロポーザル を承認 / 却下するか、さらなる情報を求めます。日本政府の承認 が得られた場合、弁護士がグラント契約書の作成にとりかかり ます。 グラントの実施と報告 JSDF グラントをする際は、世銀の調達・財務管理ガイドライ ンに準拠しなければなりません。この点では通常の世銀融資と同 じです。グラントの実施期間は、グラント契約調印の日から最長 4 年です。グラントを実施できるのは、地方政府、NGO、CSO、 地域団体です。世銀タスクチームは年に 1 回グラントの進捗報告 書を提出しなければなりません。この報告書の抄録は JSDF ウェ ブサイトに掲載されています。このほど、完了した JSDF グラン トの検証プロセスが新たに導入されました。第 5 章はこの第 1 回 目の検証結果を示しており、対象は 2006 年度に活動を完了した グラントすべてです。 15 実施中の JSDF グラント 日本に提出すべく選ばれたプロジェクトは、厳しい審査プロセスを経ることになります。したがって、 それらは、イノベーションならびにグラント準備への受領者の参加、最も貧しく最も弱い立場にある人々 のニーズへの取り組み、地方政府や NGO あるいは地域団体のキャパシティ・ビルディングなどの点で、 JSDF プログラムの基本的条件を実質的に満たしています。毎年、JSDF プロジェクトの例が年次報告の 中で紹介され、JSDF 活動の幅広さを示し、ポートフォリオの多様性を反映するものとなっています。本 報告書では、以下のプロジェクトがとり上げられていす。 表 1:本書でとり上げるプロジェクト一覧 グラント額(米ドル) 承認日 推定完了日 アフガニスタン:国家連帯プロジェクト 当初グラント 11,000,000 2004 年 9 月 23 日 2007 年 3 月 31 日 第一次追加グラント 10,011,842 2005 年 11 月 1 日 2007 年 3 月 31 日 第二次追加グラント 5,000,000 2006 年 6 月 6 日 2007 年 3 月 31 日 合計 26,011,842 エクアドル:貧困層のための法と司法 1,780,000 2002 年 6 月 6 日 2006 年 5 月 30 日 ロシア:地方ガバナンスと市民の関与 1,252,700 2003 年 1 月 2 日 2007 年 4 月 30 日 アフガニスタン:国家連帯プロジェクト グラント額:2600 万ドル(TF 054367:1100 万ドル、第一次追加:1000 万ドル、第二次追加:500 万ドル)。 グラントの受領機関 / 実施機関:復興・農村開発省 グラントの目標:コミュニティ・レベルのガバナンスを強化する基盤を作り、社会・生産インフラス とサービスへの農村コミュニティのアクセスを改善する復興・開発活動から成り立つコミュニティ管 理型サブプロジェクトを支援する。グラントのコンポーネントは囲み 4 に記載されている。 囲み 4 アフガニスタン国家連帯プロジェクト コンポーネント I:コミュニティ復興・開発プログラム コミュニティ・レベルでの参加促進プロセスを通じて確認された復興・開発活動に関わるサブプロジェクトを コミュニティが計画・実施できるようにするために、ブロック・グラントが提供される。 コンポーネント II:実施支援とキャパシティ・ビルディング このコンポーネントは、コンサルタント・チームならびに促進役の NGO パートナーによる中央、地区、コミュ ニティ・レベルでの技術的な促進・支援を目的とする。 コンポーネント III:プロジェクト実施と管理 プロジェクト実施・管理コストは、プロジェクト管理の経費増加分で構成される。 16 四半世紀に及ぶ激しい内乱と 5 年にわたる深刻な干ばつの結果、アフガニスタンは、社会・経済・保 健指標の一部が世界でも最も低くなっています。アフガニスタンの農村部には人口の 80% 近くが住んで います。村の大半の道路は、年間を通じて通行できるようにするには排水路と橋を架ける必要があります。 子供たちの大多数は教育を受けられないでいるか、青空教室で授業を受けています。農村部にはほとん ど電気が通っておらず、大半の住民は安全な飲料水を確保できないでいます。 国づくりや地方自治、軍閥支配の問題に取り組むために、また潅漑、飲料水、電化、農村の道路や学 校など基本的な農村インフラを緊急に整備するために、政府は 2003 年以降、NSP を通じて農村部コミュ ニティへの大規模な支援活動を促進してきました。プログラムは、世銀の指導の下、IDA ならびに JSDF プログラムを通じての日本などいくつかのドナーによって支援されてきました。 NSP は、JSDF 資金による 200 万ドルの NGO 支援プログラムから得られた教訓に基づいて活動して います。このプログラムはアフガニスタンで初めて NGO と政府の活動面でのパートナーシップを打ち 立てました。過去 3 年間に、NSP I に 3 度、合計 2600 万ドルに上る資金が JSDF から提供され、4 つの 州、すなわちバルフ、バーミヤン、カンダハル、ナンガルハルに割り当てられました。 写真撮影:Mio Takada 17 これまでの結果 JSDF 拠出金の影響を単独で説明するのは困難ですが、次の表(表 2)は JSDF の対象領域における事 柄の進捗状況を示しています。NSP はこれまでにバルフ州の 16 地区のうちの 13 地区(81%)、バーミ ヤン州の 7 地区すべて(100%)、カンダハル州の 18 地区のうちの 7 地区(39%)、ナンガルハル州の 22 地区のうちの 13 地区(59%)で実施されてきました。残念ながらカンダハル州では、次第に悪化する治 安情勢のために進捗が妨げられてきましたが、他の地域では大きく前進し合計 31 万 5000 世帯以上の家 族、人数にして約 190 万人に恩恵をもたらしています。 表 2:2006 年 8 月時点での JSDF 対象領域における実施・進捗状況 活動 バルフ バーミヤン カンダハル ナンガルハル 動員されたコミュニティ数 521 520 459 615 選出された CDC の数 334 513 427 594 資金提供を受けたサブプロジェクトの件数 530 829 673 788 完了したサブプロジェクトの件数 208 417 367 370 ブロック・グラントの拠出総額 810 万ドル 830 万ドル 790 万ドル 770 万ドル 経済的影響と収益率 コミュニティは一貫して農村インフラのサブプロジェクトを優先してきました。その内容は、上下水道、 運輸(道路、橋など)、潅漑、農村部のエネルギー、生計、教育などです。 これらのサブプロジェクトによって生みだされた総労働量の 80% 以上はコミュニティ内部で吸収され ました。NSP は既に 1660 万日以上の労働を生みだし、貧しい人々に一定の所得創出活動を提供しました。 コミュニティが実施したサブプロジェクトは費用対効果に優れていることが多く、通常、最も費用が安 い民間業者より 50% 以下のコストで済んでいます。 図 7 アフガニスタンの農村インフラ・サブプロジェクト その他 教育 2% 7% 上下水道 26% 生計 10% 農村部のエネルギー 15% 運輸(道路、橋など) 灌漑 21% 19% 18 NSP の成果は即効的で、村民に大きな便益をもたらしていることが裏付けられています。サンプルと して選び出された 22 件のサブプロジェクトについて見ると、経済的収益率(ERR)は平均 26.3% から 60.8% で、全体としての ERR の加重平均は 38.2% でした。 社会的影響とコミュニティの受け止め方 数量的データは揃っていませんが、質的側面についての外部調査ならびに世銀監督団の調査結果によ れば、NSP は社会面でいくつかの重要な恩恵をもたらしています。重要な影響としては、政府に対する 信頼感の向上、女性など人々のエンパワーメント、コミュニティ・レベルでの民主的ガバナンスの強化、 コミュニティ内外での社会的結束の高まりなどが挙げられます。 第一に、NSP は、政府に対するコミュニティの信頼感の向上に寄与しました。NSP は、既にアフガ ニスタン全土の 70% 以上の村を対象としています。かつてないほどのこうした大規模な活動を通じて、 政府の存在が目立つようになっただけでなく、コミュニティに対する政府統治の正当性が強まりました。 歴史上初めて、コミュニティは、政府が目に見える利益をもたらしてくれることを実感したのであり、 やがて人々は「政府は自分たちのコミュニティに関心を持っている」と感じるようになりました 2。こう した村人の受け止め方は NSP の活動が存在しない村とは対照的であり、これらの村では、人々は、政府 は自分たちを全く無視していると感じています。 写真撮影:Mio Takada 2  戦後の復興・開発部門、ヨーク大学、2006 年、NSP の中期的評価 。 19 第二に、NSP は人々のエンパワーメントに寄与しました。コミュニティ開発協議会(CDC)の設置 によって村民の共同的意思決定とプロジェクト実施への参加が著しく促進されました。民主的な選挙の 導入によって、本来、村の統治に重要な役割を果たすことなどなかった普通の村人が CDC のメンバー として選ばれ、率先してその役割を果たしています。さまざまな問題をコミュニティの手に委ねること によって、NSP は、問題を解決するための主体性と責任感を育ててきました。女性のエンパワーメント は控えめに見てもばらつきがありますが、CDC に女性が加わったことで、ときには女性たちがアイディ アについて議論することで、ひいては意思決定プロセスに影響を及ぼすことができるようになりました 3。 ナンガルハルやとカンダハルのような保守的な地域では、女性の実質的な参加はほとんど不可能です。 バーミヤンやバルフのような比較的リベラルな地域でさえ、女性は参加するものの、まだ意志決定プロ セスに影響を及ぼすには至っていません。しかし、女性の参加を奨励することによって、女性がコミュ ニティにおけるより幅広い問題に敏感になっていったことは確かです。まだまだ女性の参加を妨げる文 化的障壁がありますが、この問題は、NSP II においても男女双方を対象とした訓練やより強力な促進を 通じて引き続き取り組まれる予定です。 JSDF を通じた、日本の継続的な支援と関与は、NSP にとって主に次の 2 つの理由から重要であると 考えられます。1 つは、アフガニスタン全土をカバーするために NSP I を拡充することです。特に平等、 治安、政治的な目的のために不安定な地域へと活動を拡げていくことが決定的に重要です。もう 1 つは、 NSP II がアフガニスタンの全体的な統治にもっと広範な影響を及ぼす重要な政策課題に取り組めるよう にすることです。 エクアドル:貧困層のための法と司法 グラント額:178 万ドル グラントの受領機関 / 実施機関:プロジャスティシア(Projusticia) グラントの目的:農村部と都市部の貧しいコミュニティ、先住民、女性と子供たちが裁判外紛争処理 や有資格の法的代理人を利用しやすくする。グラントのコンポーネントは囲み 5 を参照。 法律や貧しい人々の法的エンパワーメント以前に平等がない状態ではいかなる国も貧困削減という分 野において持続可能な前進ができないであろうことは、今や広く理解されるようになっています。そう した平等やエンパワーメントがなければ、貧しい人々は基本的な法的権利も機会もないまま、気まぐれ な扱いから自らを守ることができないでしょう。最良の法制度の下ですら、貧しい人々が司法セクター・ サービスを利用しようとすると数え切れないほどの障害に直面します。だからこそ、貧しい人々が公的 制度に関して直面する障壁を減らし、裁判外紛争処理メカニズムを利用できるようにし、貧しい人々の ために有資格の法的代理人を提供する手法を開発することは、国際開発援助が貧しい人々のために法と 司法を奨励し、それと共に貧困を削減する努力を推し進めることを可能にする重要な方法です。 国際開発協会司法改革プロジェクト(1996-2002 年)に基づき、またアフリカ系エクアドル人開発プ ロジェクトと貧困削減・地域開発プロジェクトを基にした貧困層のための法と司法プロジェクトでは、 司法サービスを通じて貧しい人々をエンパワーメントするためにエクアドルの非政府セクターの豊富な 3  Kakar、Palwasha、2005 年、「NSP の微調整:問題と解決についての、促進パートナーとの議論」アフガニスタン・リサーチ・評価 部門、研究報告書 20 囲み 5 エクアドル:貧困層のための法と司法 コンポーネント 1:先住民の司法 • 慣習的な先住民の法的手続きに関する包括的な全国調査 • 139 の先住民コミュニティで確立された市民、司法界ならびに先住民のリーダーたちによる異文化間の協議 と対話 • 22 の地域・全国規模のワークショップを通じて公式・非公式の慣習的な法的プロセスについて 2881 人のコ ミュニティ・メンバーを対象に訓練を実施 コンポーネント 2:平和の文化 • 57 の小学校と高校で計画・実施される平和の文化プロジェクト • 平和的な紛争解決手法による調停員とするため 3822 人の子供たちに訓練を実施 • 平和の文化訓練・世話役として 362 人の教師に訓練を実施 • 教育・文化・スポーツ省認定の人権修了証書を参加した高校生に授与 コンポーネント 3:裁判外紛争処理(ADR)サービス • 12 の貧しい農村コミュニティのために新たに ADR センターを設置し国として認定 • 159 人の新しい調停員に訓練を実施して認定 • 全国的な ADR ネットワークと情報センターの設置 コンポーネント 4:公的弁護サービス • キトとグアヤキルでそれぞれの弁護士会が司法サービスセンターを設立 • 国の教育機関である CONESUP によって承認された新しい第 4 級国家学位プログラムで 150 人の弁護士に 訓練を実施し認定 • 司法サービスセンターによりキトで合計 3,712 人の訴訟依頼人の案件に取り組み、グアヤキルでは 1 万 1000 件以上の訴訟に取り組む 専門知識が活用されました。このプロジェクトは、エクアドルの 22 州のうちの 21 州でエクアドルの 12 の非政府組織と協力しながら、先住民コミュニティのエンパワーメントを実現し、農村部における裁判 外紛争処理の仕組みを作り、増大する若者の暴力の問題に取り組み、貧しい人々に無料の法的支援を提 供する努力を支援する等の一連の活動を展開してきました。 プロジェクトの 4 つのコンポーネントは相互関連しており、貧しい人々のニーズに直接応えることに より、また公的司法セクターによっては満たされていないニーズに応じる能力に関して NGO を支援す ることに加えて、キャパシティ・ビルディングとコミュニティのエンパワーメントを促進することにより、 JSDF プログラムの主要な目的のすべてを具体化するために進められてきました。 これまでの成果 調査、訓練、パイロット活動を組合せることにより、NGO は、司法を利用しやすくするために一連 の持続可能な活動を実施してきました。 21 エクアドル憲法第 191 条を実施するにはどうするのが一番よいかについて継続中の政府対話を支援す るために、市民や司法界、先住民のリーダーたちの異文化間の対話を実現しようと 139 の先住民コミュ ニティで協議が行われてきました。その過程で、いくつかのチームは、先住民の慣習的な法的慣行を国 際的に調査し、さらなる訓練が必要な領域を確認しました。訓練資料作成への参加に続き、専門のワー クショップと訓練活動が貧しい人々のためにエクアドル全土で、また特に農村部の貧しい先住民コミュ ニティで実施されました。こうした活動を支援する中で、新たにいくつかの先住民組織やコミュニティ 運動と協力協定が結ばれ、作成された訓練資料が同様の活動中において使用することができるようにな りました。 写真撮影:Projusticia エクアドルの 1997 年仲裁・調停法は、都市部と農村部を問わず貧しいコミュニティが司法サービス を受けやすくするために裁判外紛争処理の仕組みを利用することを奨励しました。地域のサービス提供 者が都市部の貧困層のニーズを一部満たすことができる手段を編み出してきたのに対し、公的な司法セ クターも大半の裁判外紛争処理業者も農村部の貧しい人々のニーズを満たすことができていませんでし た。農村部で利用の困難な分野に重点をおいたこのグラントは、核となる新しい調停員に訓練を実施す ると共に、主催する地方自治体との協定により 12 の新しく持続可能なセンターを開設する手段を提供 しました。さらに、同グラントは、経験と情報を交換する公的な仕組みを作り出し、これらのサービス の全国的な基準を作成し始めるという取り組みの一環として、農村部・都市部の裁判外紛争処理の世話 人たちが正式の会議を開けるように国の情報センターを設立するのを支援しました。 犯罪と暴力は貧しい人々にとりわけ大きな悪影響を与え、これらが持続可能な経済開発への障害と なっているところから、ますます開発問題であると認識されるようになってきています。エクアドル全 22 写真撮影:Projusticia 土で増大する子供や 10 代の若者による暴力の問題への対策を確立するために、平和の文化を広めるた めの活動が、国家教育当局の指導の下、地元の学校や地方自治体と協力して考案・実施されてきました。 教育のさまざまな方法や手法を通じて、エクアドル各地の若者たちが、犯罪と暴力の問題に取り組み、 国としての人権基準を推進する方法について新たな自覚を促すため、多くの活動を考案し指導してきま した。 23 司法サービスや自衛権は憲法上保証されているにもかかわらず、1300 万人を超える住民に対して国 選弁護人は 32 人しかおらず、NGO や大学の診療所が提供する無料の司法サービスはごく限られていま す。同グラントは、グアヤキルとキトの弁護士協会の活動を支援することによって、無料で持続可能な 司法サービス・モデルや提供者のネットワークを構築し正式なものとするのを援助しています。その中 で、このモデルは多くの貧しい人々に多種多様な法律問題について無料の法的代理人制度を提供してき ました。 このプロジェクトは既に完了しています。これは、独立したコンサルタント・チームに高く評価され たプロジェクトの 1 つであり、弱体な司法制度、長い待機期間、人権や対象となる人々のニーズに関す る不十分な記録といった状況下で、極めて適切なプロジェクトであるとされました。また政府の戦略を 補完する役割も果たしました。 ロシア農村部の地方ガバナンスと市民の参加 グラント額:120 万ドル グラントの受領機関 / 実施機関:経済開発・貿易省およびロシア連邦地域開発省 グラントの目的:公式・非公式の地方ガバナンス機関のキャパシティ・ビルディングとコミュニティ の参加を促進し、市民の参加によるエンパワーメントの強化を通じて、農村部コミュニティのより効 果的かつ公正な社会経済的開発を促進する。グラントのコンポーネントは囲み 6 を参照。 囲み 6 ロシア農村部の地方ガバナンスと市民参加 コンポーネント 1:立案プロセスと選定 詳細なプロジェクト実施計画を作成し、試験的実施区域や外注企業、 農村部地方自治体のコンサルタント、法律顧問を選ぶ。 コンポーネント 2:市町村開発の立案と予算化 市町村開発のためのキャパシティ・ビルディングと共に、資 源をもっと効果的に配分し、サービスの提供を改善し、地方開発計画を立てる。 コンポーネント 3:需要主導のサービス提供の拡大 資源の利用や民間の寄付、公共 / 民間サービスの提供や 社会的パートナーシップなどサービス提供とコミュニティ・イニシアティブの新しいモデル構築のための公的 支援を促進する。 コンポーネント 4:普及・モニタリング・評価・監査 メディア、刊行物、自治の最良の慣行ツールキット、 視察旅行、地域講習会、プロジェクト・コンポーネントのモニタリング・評価・監査を通じて浸透を図る。 ソ連崩壊後のロシアにおけるグラントの重要性 ロシア農村部の社会経済開発にとっての困難は、相対的に高い貧困率に加えて教育や保健など社会的 サービスの利用が困難であることなどです。2004 年貧困アセスメントによれば、農村部の貧困率は都市 部の実に 2 倍を記録しています(30% 対 15%)。農村部の貧困はエンパワーメントの欠如によって一層 深刻です。というのも、農村部の多くのコミュニティには公的資源の管理権がなく、したがって経済成 長を促進する、あるいは社会的サービス提供の改善を促すインセンティブがほとんど存在しないからで 24 す。さらに、インフラが劣化し、サービスの質が低下しているので、教育、保健、運輸など公的サービ スが利用しにくくなっています。 連邦政府が最近可決した地方統治関連の法律の多くは 2006 年 1 月に発効したもので、自らの暮らし と地方の資源に対する管理権を獲得し、農村部のコミュニティが自主的予算編成権や長期的開発の立案 権を要求できるようエンパワーメントの余地を与えるものです。とはいえ、農村部においては、地方分 権だけでは統治効率の向上を保証するには十分ではないと言えるでしょう。地方予算の歳入不足、利用 者重視のサービス提供の経験や参加の仕組みがほとんどないことが大きな障害となっています。農村部 のリーダーの管理能力を高め、意志決定プロセスへの参加の仕組みに関する新しい概念を生みだし、農 村コミュニティのニーズに応える社会サービスを提供するには、一層の努力が必要です。地方自治体に この機会を利用するための能力や手段、手順など力を備えていない場合、新法は、新たに創設されたこ れらの機関を州の管理下に入れると規定しています。そうなれば、政府をもっと住民のニーズに敏感に 対応するようにし、地域開発への市民の参加を促進する機会が制限され、結果的に、関心とエンパワー メントが失われるという悪循環が続くことになるでしょう。したがって、社会主義政権崩壊後の環境下 で地方統治の改革努力を継続し、農村部の地方政府を強化する必要がある中、このパイロット・プロジェ クトの課題がいかに重要かは明らかです。 写真撮影:Lubov Ovchintseva 25 パイロット・グラントの内容 ロシア政府に対する 120 万ドルの JSDF グラントは、上述の難題のいくつかに取り組むことを目指し たものでした。このパイロット・プロジェクトは、公的セクター管理の改善ならびに社会的リスクの緩 和(これらは世銀のロシア援助戦略 2003-6 年における 3 つの目標の 2 つです)に向けた実質的かつ測 定可能な進歩を達成するための手段として着想されました。具体的には、(1)ロシアの地方政府が直面 している最も重要な問題の解決を目指し目標を定めた技術協力を行うこと、(2)対象とするパイロット 区域で現場での活発な活動を維持するために分権的な活動方式を重視すること、(3)費用対効果に優れ ていることが分かっている、訓練 / 技術協力の実施・普及・再現の方法と並行して、地方のパートナー の専門知識強化と持続可能なキャパシティ・ビルディングを行うことの 3 つにより、目標達成に努めま した。 これまでの成果 JSDF グラントはいくつかの重要かつ革新的な成果を挙げてきました。以下はその一部です。 i) 農村部の法律面での真空状態を解消し、貧しい農村部住民に公的な法的サービスと均等な機会 を提供する公的機関の重要性の問題に関する市民との無料の法律業務。 予算案作成、サービス提供、 地方ガバナンスのコミュニティ参加型方法について農村部のリーダーとコミュニティを対象に有力な専門家による 訓練を実施することも、ロシア農村部の地方ガバナンス・市民参加グラントの一環です。写真撮影:Lubov Ovchintseva 26 ii) 地方統治に関する法律をどのように運用するかについての地方政府への法律上の助言。 iii) パイロット地域で実施される、法的環境の分析、ならびに地方政府の法的枠組みを改善するた めの勧告。 iv) 地方政府とコミュニティを継続的に援助し、将来の機会に備えてスキルを確立する 18 人の農 村部地方自治体のコンサルタントと法律顧問による地域間ネットワークの創設。 v) 予算案作成、サービス提供、 コミュニティを意志決定プロセスに関わらせるための参加型方法 について農村部のリーダーとコミュニティを対象とする訓練の実施。 vi) サービス改善行動計画を通じてのコミュニティ参加による次期予算サイクルの優先順位と解決 策を農村部地方政府が決定するのを支援。 vii) 社会基金を創設し、確認された優先事項を遂行するために非予算資金を確保。 viii) 保健、教育ならびに公的改善に関するサービスの分析とこれらのサービスのモニタリングと改 善についての勧告。 ix) ペルミとアドゥィゲア共和国で地域カード(コミュニティのニーズを調査するためのもの)を 作成・試行。 さらに、同パイロット・プロジェクトは、当初予定にはなかった地方ガバナンスと資金調達の仕組み の一層革新的な開発を促しました。例えば、同プロジェクトは、パイロット地域における社会的イニシ アティブのためのコミュニティ維持基金や情報センターを支援し発展させました。若者たちが社会的変 化の起爆剤や村の生活の管理と改善の当事者として演じる重要な役割もまた、JSDF パイロット・グラン トに参加している地方・地域政府によって検討され始めました。シビルソサエティ組織や地域コミュニ ティ、NGO との持続可能で革新的なパートナーシップを打ち立て、制度としての能力を強化すること が可能になったのは、グラント・メカニズムの特性のおかげでした。 JSDF グラントのフォーマットにはいくつかの比較優位があります。第一に、それは制度のイノベーショ ンや実験を促進し、公認・非公認の政府の能力を強化する活動が村落レベルで行なわれることを可能に します。さらに、中所得国(MIC)においては、最貧困層を対象とする本来のプログラムを支持するも のであり、革新的なパイロット・プロジェクトが成功した機関の実践の例証となることにより、これら の国々との機関の対話に重要な貢献ともなります。いずれも、世銀の資金と民間資金はもとより国の予 算やその他の公的資金を組み合わせて、より大規模な改革プログラムへと拡大することが可能です。中 所得国は、例えば公的資金による社会開発基金を通じて国家の予算配分にイノベーションを組み入れる ことができます。このアプローチは、大規模な改革に伴うリスクを軽減し、政府と住民双方のより積極 的かつ多様な参加を促進します。 地方政府改革論議への政府の関与と参加は、ここ数年の間に強まってきました。パイロット区域に地域・ 地区・村落の政府職員やコンサルタントが積極的に関わってきたことがプロジェクトの成功の主因と言 えるでしょう。全体として、社会主義を放棄してからまだ四半世紀に満たない国における地方ガバナン スと市民参加プロジェクトは、選挙によって選ばれた公務員がダイナミックな市民の参加を得ながら遂 行する効果的で効率的な地方統治に至る長い道に一歩踏み出す重要な契機となりました。 27 アドゥィゲア共和国の運動場:村民たちが地域コミュニティ維持基金と共同で設計し作り上げた小額のコミュニティベース・グラントにより実 現しました。写真撮影:Lubov Ovchintseva シード基金の影響 2002 年 3 月に、日本政府は、JSDF グラント・プロポーザルの準備に伴い発生する追加コスト負担を 支援するため、JSDF シード基金の創設に同意しました。JSDF プロジェクトは、需要主導型の活動に資 金を提供するものであるため、グラント活動の設計に参加型アプローチが採用されるよう関係者による 集中的な協議が必要になります。そこで、このプログラムは、受益者であるコミュニティ、シビルソサ エティ組織、NGO、現地政府担当機関からタスクチームが直接情報を引き出すことができるように 5 万 ドルを限度とするシード・グラントを提供します。JSDF シード基金グラントの実行期間は最大 12 カ月 であり、期間終了時にタスクチームは十分に練り上げられた JSDF グラント・プロポーザルを提出する ことが望まれます。 すべてのシード基金プロポーザルが必ず JSDF プロポーザルに結びつくというわけでも、シード基金 のグラントを基に準備されたプロポーザルがすべて JSDF 運営委員会により承認されるわけでもありま せん。協議の目的は、当初のプロジェクト案が対象となるコミュニティのニーズや期待に沿うものであ るかどうかをチェックすることです。ずれが生じる可能性もあれば、ほかのプロジェクトの方がコミュ ニティのニーズに対応していると判明する可能性も常に残ってはいます。とはいえ、シード基金プロポー ザルは、JSDF プロポーザルが承認される可能性が高くなるよう慎重かつじっくりと審査されます。 28 シード基金が始まってからの 2 年間は、運営委員会に承認されるに至ったプロポーザルがほとんどな かったことは注目に値します。2002 年度 -2006 年度には 53 件のシード基金申請が承認され、うち 27 件 はプロポーザルとして日本政府の承認を受けました。特に 2006 年度には、承認された 5 件のシード・ グラントのうち運営委員会に提出され承認されたプロポーザルは 1 件のみでした。ですから、これまで のところシード基金の 50% 以上が 2002 年度 -2006 年度の期間にプロポーザルへと行き着いたことにな ります。 シビルソサエティ組織との協働 JSDF は、NGO やシビルソサエティがグラントの計画立案や準備、実施に参加することを奨励してい ます。これまで経験から、有能な NGO には政府のプロジェクトにはできない形で貧困層に働きかける ことが可能であることがわかっています。JSDF の下、NGO やシビルソサエティは受領者と実施機関の どちらにもなることができます。ただし、各国の法律や政府の意向によっては、政府が受領機関となり NGO や CSO が実施機関となる場合もあります。さらに、NGO や CSO と政府が共同で実施に当たる 場合もあります。 以下の表は、2006 年度に承認されたグラント・プロポーザルの内訳です。表 3 は、JSDF グラントの うち 14 件で政府機関が受領機関となっていることを示しています。 表 3:2006 年度に承認されたグラント・プロポーザルの受領者別内訳 グラント件数 % 政府 14 67 NGO/CSO 7 33 合計 21 100 表 4 は、NGO や CSO を実施機関とすることの利点が認識されたことを示しています。2006 年度に 承認されたグラントの 52% が NGO や CSO によって実施されており、さらに 10% は NGO や CSO が政府関係機関と共同で実施しました。 表 4:2006 年度に承認されたグラント・プロポーザルの実施機関別内訳 グラント件数 % 政府 8 38 NGO/CSO 11 52 政府 /NGO/CSO 共同 2 10 合計 21 100 29 JSDF グラントは、大いに切望されている介入を拡大するためささやかな活動をしている NGO や CSO のエンパワーメントに役立てることができます。JSDF は、NGO/CSO を支援することにより、キャ パシティ・ビルディングのほか、最も弱い立場にある人々を支援する活動の持続可能性向上に貢献する ことができます。 30 第5章 完了した JSDF グラントの検証 完了したグラントを検証する目的は、グラント実施の経験から 学ぶためであり、特にプログラムを改善できるようにフィード バックを行なうためで、2006 年度に終了した(支払いが 2006 年 10 月 31 日以前に終了した)18 件のグラントについて行われまし た。完了したグラントの一覧は付表 7 のとおりです。 報告があった 18 件のグラントのうち、キャパシティ・ビルディ ング・グラントは、グラントの 60% 以上を占めて、世銀の 6 つ の地域すべてにわたっています。しかし、金額で見ると、グラン トの大半はプロジェクト活動向けでした(54%)。終了したプロ ジェクトは、世銀のすべての地域にわたっており、18 件のうち 6 件が南アジアで、東アジア・大洋州は 5 件、アフリカ、ヨーロッパ・ 中央アジア、ラテンアメリカ地域はそれぞれ 2 件、中東・北アフ リカ地域は 1 件でした。グラントは 14 カ国のさまざまな問題に 取り組みましたが、国別に見ると、アフガニスタン、インドネシア、 フィリピン、インドはいずれも 2 件のグラントを受領しました。 検証方法は、グラント報告・モニタリング(GRM)システム で TTL が作成したグラント完了報告書、そして SAP と信託基金 会計部門のデータを基にしています。グラントの実績が、「大い に満足」「満足」 、 「やや満足」 、 、 「やや不満」「不満」 、 「大いに不満」 、 の 6 段階に格付けされました。評価は概ね「大いに満足」「満足」 、 、 「やや満足」のいずれかでした。以上の評価に加えて、GRM 報告 書は、JSDF プログラム目標の他の重要な側面に関する情報、例 えばコミュニティ / シビルソサエティ組織の参加、実施された活 動のグラント終了後の持続可能性、世銀の他のプロジェクトや拡 大に際して利用できそうな教訓などについての情報も提供してい ます。 31 検証の対象となった 18 件のグラントのうち、2 件は明らかな失敗に終わりました。インドのジャルカ ンド参加型森林管理プロジェクト(グラントの 10% が支出された後、断念された)と、シンド(パキス タン)のプロジェクト(支出に至る前に中止された)がそれです。開発目的の達成という点では、プロジェ クトのうちの 3 件が大いに成功と評価されました(アフガニスタン、インド、フィリピンの各 1 件、)。 しかし、1 件(ヨルダン)だけは「辛うじて成功」と評価されました。したがって、全部で 18 件のプロジェ クトのうち 90% 近くは成功、あるいは大いに成功と評価されたことになり、これは極めて不利な立場に 立たされたグループを対象とした革新的なプロジェクトを支援するプログラムとして、目覚ましい成果 と言えるでしょう。 グラントの実施成績という点では、完全に失敗した先の 2 件のプロジェクトを除くと、1 つのプロジェ (上と同じ、 クトは大いに成功と評価されました 。 フィリピンの都市貧民更正プロジェクト) 4 件のプロジェ クトは辛うじて成功に過ぎませんでした。つまり、プロジェクトの 3 分の 2 が成功あるいは大いに成功 と評価されたことになります。 同報告書は、活動が実施された 16 件のプロジェクトについて JSDF の広範な目的のいくつかに関して もそれがどの程度達成されているかを明らかにしています。これら 16 件のグラントのうちの 13 件にお いて、計画された目的と成果のすべてあるいはほとんどすべてが実現できたと報告されています。残る 3 2 件は期待はずれな結果となりました。 件のうち 1 件は部分的達成に終わり、 JSDF プロジェクトの実験的・ 革新的な性格を考えると、スタートしたプロジェクトの 80% 以上が目的を達成したことは大変印象深い ことであり、改めて注目に値するでしょう。 持続可能性と再現可能性は JSDF の関与が成功したかどうかを判断する 2 つの基準です。16 件のグラ ントのうち 11 件は、活動が確実にあるいはかなりの確率で持続可能と報告され、さらに 3 件は持続可能 性があると見込まれると報告されましたが、もう 1 件は資金的制約が持続可能性に影響しそうな要因と 木箱を作るエジプトの子供たち 32 して指摘されました。活動が持続可能でないと報告されたのは残る 1 件だけでした。16 件のグラントの うち 10 件は活動が明らかに再現可能であり、一部についてはすでに世銀などの援助の下で拡大された形 で再現されていたり、他の国で再現されていたりすると報告されました。さらに 3 つのケースでは再現 は可能であると報告され、2 件のみが再現の可能性が薄いか不可能であると判断されました。 JSDF は、地方政府やシビルソサエティ組織、NGO と協力して活動するプロジェクトを推進するもの です。すべてのプロジェクトがこの基準を満たしており、また実際に NGO が実施したわけではないも のがほとんどではあるにせよ、プロジェクトのうち 9 件は NGO の積極的な関与があったことが報告さ れました。 18 件の報告書は、資金の拠出パターンについていくつか有益な情報を提供しています。中止された 2 件のグラントは、配分された資金の約 5% を拠出したにとどまりました。残り 16 件のグラントは配分さ れた資金の 94% を拠出し、これら 16 件のうち 12 件ではグラント額の 90% 以上が拠出されました。 33 第6章 JSDF の管理とコミュニケーション コミュニケーション・プロセス JSDF が供与したグラントの進捗状況を検討し、プログラムと グラントの全体的な目的が達成されていることを確認するため に、世銀は年次報告書を作成し、日本政府に提出します。年次報 告書は JSDF ウェブサイトでも公開されます。さらに、世銀と日 本政府は審査会議を開催します。この会議では、グラント・プロ ポーザルの検討と承認 / 処理について話し合われるほか、改善す べき点について合意が図られます。JSDF のガイドラインが記載 されている年次方針文書(付表 8 を参照)は毎年改訂され、日本 政府の承認を受けます。 JSDF についての詳しい情報 JSDF についての情報を提供するウェブサイトはいくつかあり ます。メインの JSDF ウェブサイトは世銀のメイン・サイト上に あります: http://www.worldbank.org/jsdf 世銀東京事務所のウェブサイトにも JSDF についての情報が掲 載されています。 英語版:http://www.worldbank.org/japan/about 日本語版:http://www.worldbank.org/japan/about-j 34 付表 1:2006 年度に承認された JSDF プロジェクト・グラントと キャパシティ・ビルディング・グラント 国 金額 (グラントの種類 1) グラント・プロポーザルの名称 (単位:ドル) 開発目標 第 16 次拠出 インドネシア(P) 特に貧しい子供たちのための教育 1,375,000 特に貧しいコミュニティの小・中学校就学者を増やし、成績向上 を図る。 第 17 次拠出 インド(P) 開発イニシアティブのためのオリッサ州基金 1,370,532 社会で弱い立場にある人々のために手織機、養蚕および薬用植物 (OFFDI) を中心とする持続可能な生計システムの開発を促進することによ り、オリッサ州で貧しい非公式労働者の所得を増やし貧困を削減 するパイロット・プロジェクトを実施する。 エチオピア(P) 保健サービスへの緊急アクセスの促進 1,542,375 性と生殖に関する健康ならびにリスクの問題に関する知識を増や すと共に、保健など基本的な社会サービスへのアクセスの改善を 目指し現地の交通対策を策定・実施する。 ケニア(P) ケニアの青少年育成 1,999,418 (b) (a)青少年組織への 40~60 件のグラント、 青少年組織のキャ パシティ・ビルディング、 (c) 社会的説明責任、参加型モニタ リングと評価、市民参加とリーダーシップについての訓練、を通 じて青少年の社会への取り込み、参加、エンパワーメントを強化 する。 第 18 次拠出 グアテマラ(C) 西部アルティプラノの先住民と現地 NGO の 900,000 条件のよい雇用機会の創出、所得の向上、インフラ・アクセスの ためのキャパシティ・ビルディング 強化、社会的からの排除軽減のために、地元先住民コミュニティ に対する専門家の援助と訓練を通じてキャパシティ・ビルディン グを実施する。これらの活動により、先住民は暮らしの向上を図 り参加型の企画立案能力を強化することになる。 ギニア(C) 性と生殖に関する健康とオンコセル症プログ 546,800 家族計画と HIV/ エイズ対策を指導することにより農村部コミュ ラムの統合 ニティにおける性と生殖に関する健康情報とサービスへのアクセ スを加速させるために、既存のオンコセル症(回旋系状虫症)感 染コミュニティ向けネットワークを活用するイニシアティブを試 験的に実施する。 ホンジュラス(P) 子供と若者のイノベーション基金 2,000,000 弱い立場にあり危険にさらされている子供たちと若者の状況を改 善する。特に HIV/ エイズに感染した子供や若者ならびに特に貧 しい中で障害を抱えながら暮らす子供や若者に特別の注意を 払う。 P= プロジェクト・グラント;C= キャパシティ・ビルディング・グラント 1  35 付表 1:2006 年度に承認された JSDF プロジェクト・グラントとキャパシティ・ビルディング・グラント(つづき) 国 金額 (グラントの種類 2) グラント・プロポーザルの名称 (単位:ドル) 開発目標 第 18 次拠出(つづき) インドネシア(P) 持続可能な暮らしのための農村部の接続性の 1,297,595 農村住民(特に女性)の暮らし向上に役立つ知識、情報、コミュ 改善 ニケーション手段へのアクセスを改善する持続可能なモデルとア プローチの開発に貢献する。 フィリピン(C) 貧しい人々にサービスを提供する NGO セク 361,397 貧困率の高い地域に基本的サービスを提供するに際して NGO の ターの効率化と説明責任の強化 説明責任と効率を高める。 トルコ(C) 青少年の育成と社会的交流 1,932,000 社会から排除された青少年を社会の主流の社会的・経済的・政治 的生活に統合することを通じて社会の一体性を強化するのに貢献 する。 第 19 次拠出 カザフスタン(P) コミュニティ・ベースのアラル海漁業管理と 1,902,285 漁業コミュニティの生活状態と相互のコミュニケーションを改善 持続可能な暮らし し、環境悪化を防ぐ。収益と女性の売り手の暮らしを改善するた めに燻煙技術の向上と販売協会の設立を図る試験的活動を支援 する。 2006 年度合計 15,227,402 P= プロジェクト・グラント C= キャパシティ・ビルディング・グラント 2  36 付表 2:2001 年度 ̶ 2006 年度の JSDF グラント地域別配分 地域 年度 グラント件数 金額(単位:ドル) 東アジア・大洋州 01 17 19,483,034 02 6 5,573,889 03 6 10,146,014 04 9 12,218,002 05 10 17,265,779 06 3 3,033,992 小計 51 67,720,708 南アジア 01 3 3,686,923 02 4 2,951,900 03 5 4,023,106 04 6 6,758,255 05 0 0 06 1 1,370,539 小計 19 18,790,723 ヨーロッパ・中央アジア 01 5 3,036,500 02 5 7,037,175 03 4 5,430,500 04 0 0 05 5 7,405,084 06 2 3,834,285 小計 21 26,743,544 中東・北アフリカ 01 0 0 02 3 1,569,295 03 0 0 04 1 1,952,487 05 1 1,128,200 06 0 0 小計 5 4,649,982 ラテンアメリカ・カリブ海 01 3 4,270,075 02 2 2,538,500 03 2 2,409,300 04 3 4,063,500 05 6 5,333,345 06 2 2,900,000 小計 18 21,514,720 アフリカ 01 3 2,225,780 02 3 2,634,949 03 1 649,450 04 5 6,668,582 05 8 10,330,121 06 3 4,087,593 小計 23 22,508,882 JSDF グラント合計 01 31 32,702,312 02 23 22,305,708 03 18 22,658,370 04 24 31,660,826 05 30 41,462,529 06 11 15,226,409 合計 137 166,016,154 37 付表 3:2006 年度に承認された JSDF シード・グラント 国 グラント・プロポーザルの名称 金額(単位:ドル) 承認年月日 アルメニア 市民参加支援グラント 49,750 2005 年 7 月 6 日 ハイチ及びドミニカ共和国 コミュニティ災害管理プロジェクト 32,192 2005 年 7 月 29 日 ベトナム 貧しい漁業コミュニティの共同管理への参加 49,750 2005 年 8 月 18 日 マラウイ 保健セクターにおける説明責任奨励の手段としての 46,365 2005 年 12 月 12 日 語り聞かせ ロシア 司法機関の社会的説明責任と透明性の強化 49,680 2006 年 5 月 15 日 2006 年度合計 227,737 38 付表 4:2006 年度に承認されたパキスタン地震復興特別プログラム グラント・プロポーザルの名称(グラントの種類 3) 金額(単位:ドル) 開発目的 障害を持つ人々の自立した生活の促進(P) 767,312 グラントの目的は、(1)AJK と NWFP の地震被災地域における障害を持つ人々 に革新的で非居住型での仲間同士によるリハビリテーション・サービスを提供 する、(2)障害を持つ人々の仲間同士によるリハビリテーションに対する同様 のアプローチへの州 / 連邦政府の資金配分を制度化する方向で公的政策を改革 する、(3)障害を持つ人々のためにバリアフリーの物理的・政策的環境を促進 することにある。 再建のためのコミュニティのキャパシティ・ビルディ 1,000,000 グラントの全体としての目的は、(1)防災建築基準にあった改良型住宅に建て ング(C) 直し、(2)コミュニティの主要道路、灌漑水路、下水道設備工事などコミュニ ティ・インフラの労働集約的な修理・再建などの社会的保護サブプロジェクト に参加し、(3)利用可能な種々の政府 / ドナー /NGO のプログラムから恩恵 を受けるために、被災コミュニティ、特にその中でも弱い立場にある人々のキャ パシティ・ビルディングに努めることにある。 JSDF- パキスタン:一次医療の再活性化と改善(P) 2,999,952 目的は、地震後に一次医療(PHC)サービスを再活性化・改善する業務を復 活させるために官民パートナーシップを機能させることにある。その目的は、 (i)標準的な一連のサービスを広範囲に提供できるように急速に PHC サービ スを再活性化する、(ii)PHC サービスの提供を調整・計画・実施し、かつモ ニタリングする地区管理の能力強化を支援することにある。本プロジェクトは (b) 以下の点の改善を目指している。即ち(a)サービスの提供範囲 / 利用率、 医療の質、(c)サービスへの平等なアクセス、 (d)コミュニティがサービス に満足できるようにする、 (e)各自のコミュニティに役立つ仕事への復帰に関 心がある既存の医療保健従事者を支援し援助する。 JSDF- パキスタン:障害がある人々のコミュニティ・ 1,684,040 全体としての目的は、以下の点を実現するためにコミュニティ・ベースのモデ ベースのリハビリテーション(P) ルを稼働させることにある。即ち、 (1)以下の各項を大幅に改善する―(a) 障害を持つ人々のためのリハビリ・サービスと問題解決策の対象範囲と利用率、 (b) 医療の質、(c)リハビリテーションと解決策への公平なアクセス、 (2) 障害を持つ人々へのリハビリ・サービスの提供を効果的に組織・計画・実施・ モニタリング・評価するコミュニティ・ベースの組織および地区レベルの関係 者の能力を強化する、 (3)障害を持つ人々がリハビリテーション・サービスと 解決策に満足できるようにすると共に、それらに関わり合えるようにする。 2006 年度合計 6,451,304  P= プロジェクト・グラント C= キャパシティ・ビルディング・グラント 3 39 付表 5:2006 年度に承認されたアフガニスタン特別支援 グラント・プロポーザルの名称(グラントの種類 4) 金額(単位:ドル) 開発目的 国家連帯プログラム – 既存のグラントへの第一次追 10,011,842 第一次追加グラントの目的は、コミュニティ・レベルのガバナンス強化の基盤 加グラント(P) を築く当初グラントの目的と同じである。即ち、社会的・生産的なインフラや サービスへの農村部コミュニティのアクセスを改善するための再建・開発から 成るコミュニティ管理サブプロジェクトを支援することである。提案された追 加グラントにより対象範囲は 7 地区 300 村から 14 地区の 1,118 村に拡大さ れる。 国家連帯プログラム – 既存のグラントへの第二次追 5,000,000 第二次追加グラントの目的は当初グラントのそれと同じである。第二次追加グ 加グラント(P) ラントは、非合法武装グループの武装解除を無事完了したアフガニスタンの特 定のコミュニティに資金供与する。 2006 年度合計 15,011,842  P= プロジェクト・グラント C= キャパシティ・ビルディング・グラント 4 40 付表 6:2006 年度に承認された JSDF 津波被害復興グラント 国 グラント・プロポーザルの名称 金額(単位:ドル) 開発目的 インドネシア 津波被害を受けた漁業セクター 1,927,685 津波の被害を受けた漁業コミュニティの生活再建と資本再編成プログラムを支 復興の支援 援する。 ソマリア 津波後の生活再建プロジェクト 1,642,526 津波の被害を受けたおよそ 800 世帯の漁業中心の暮らしを建て直し強化する。 ソマリア プントランドの一次医療サービス 525,000 津波被害を受けたソマリア北東部(プントランド)の弱い立場にある人々の健 康状態を改善し、伝染病や水媒介性疾病の発生を抑制する。 タイ 津波被害を受けた貧しく弱い立 1,850,000 法律相談や関連サービスの提供を通じて津波で生き残った貧しく弱い立場にあ 場にある人々のための法律相談 る人々の暮らしを立て直す。 2006 年度合計 5,945,211 41 付表 7:2006 年度に完了したグラント一覧 承認されたグラント 番号 グラント番号 グラントの名称 グラントの種類 地域 国 金額(単位:ドル) 承認年月日 アフリカ地域 1 TF051548 JSDF −マリ : (西アフリカ) キャパシティ・ AFR マリ 463,785 2002 年 4 月 10 日 草の根のキャパシティ・ビ ビルディング ルディングに向けた戦略的 連携 2 TF050948 JSDF −ギニア(西アフリ キャパシティ・ AFR ギニア 463,785 2002 年 4 月 10 日 : カ) 草の根のキャパシティ・ ビルディング ビルディングに向けた戦略 的連携 東アジア・大洋州 3 TF026563 JSDF −インドネシア: プロジェクト EAP インドネシア 2,304,800 2000 年 11 月 1 日 違法占拠者の定住を援助す るパイロット・プロジェク ト(受領機関が実施) 4 TF026783 JSDF −フィリピン:都市 プロジェクト EAP フィリピン 1,887,500 2001 年 4 月 12 日 貧民コミュニティのリ ニ ュ ー ア ル・ ス キ ー ム の 拡充 5 TF026799 JSDF −インドネシア: プロジェクト EAP インドネシア 1,545,000 2001 年 7 月 31 日 辺境漁業コミュニティ開発 のためのパイロット・プロ ジェクト 6 TF051332 JSDF −辺境の高地水域の プロジェクト EAP ラオス人民民主 717,270 2002 年 6 月 28 日 地域コミュニティ・エンパ 共和国 ワーメント 7 TF050944 JSDF −フィリピン:貧困 プロジェクト EAP フィリピン 718,269 2002 年 4 月 10 日 層に配慮した予算作成に関 するコミュニティのキャパ シティおよび貧困削減に関 する地方政府の説明責任の 育成 42 付表 7:2006 年度に完了したグラント一覧(つづき) 承認されたグラント 番号 グラント番号 グラントの名称 グラントの種類 地域 国 金額(単位:ドル) 承認年月日 ヨーロッパ・中央アジア地域 8 TF026774 JSDF −モルドバ プロジェクト ECA モルドバ 800,000 2001 年 4 月 1 日 普通中等教育を通じての 融和 9 TF051331 JSDF −アルメニア:保育 プロジェクト ECA アルメニア 961,000 2002 年 6 月 28 日 システム改革の試行 ラテンアメリカ・カリブ海地域 10 TF051227 JSDF −エクアドル:貧困 キャパシティ・ LAC エクアドル 1,780,000 2002 年 6 月 6 日 層のための法と司法 ビルディング 11 TF051374 JSDF −ニカラグア:コミュ プロジェクト LAC ニカラグア 1,489,300 2002 年 8 月 14 日 ニティ・レベルでの脆弱性 削減プログラム 中東・北アフリカ地域 12 TF026801 JSDF −ヨルダン:貧しい キャパシティ・ MNA ヨルダン 191,000 2001 年 7 月 31 日 女性のための法律相談 ビルディング 南アジア地域 13 TF026802 JSDF −スリランカ:貧し キャパシティ・ SAR スリランカ 282,000 2001 年 7 月 31 日 い女性のための法律相談プ ビルディング ロジェクト 14 TF050945 JSDF −パキスタン:シン キャパシティ・ SAR パキスタン 910,000 2002 年 4 月 10 日 ド族の弱い立場にあるグ ビルディング ループのための基金 15 TF051429 JSDF −アフガニスタン: キャパシティ・ SAR アフガニスタン 1,481,100 2002 年 7 月 29 日 国家連帯プログラムのため ビルディング のキャパシティ・ビルディ ング 43 付表 7:2006 年度に完了したグラント一覧(つづき) 承認されたグラント 番号 グラント番号 グラントの名称 グラントの種類 地域 国 金額(単位:ドル) 承認年月日 南アジア地域 16 TF053445 JSDF − ジ ャ ル カ ン ド 州: キャパシティ・ SAR インド 432,000 2004 年 3 月 6 日 ジャルカンド州参加型森林 ビルディング 管理のためのキャパシティ・ ビルディング 17 TF051711 JSDF −アフガニスタン: プロジェクト SAR アフガニスタン 500,000 2002 年 10 月 31 日 保健セクターの緊急再建・ 開発プロジェクト 18 TF051375 JSDF −インド:貧しい人々 プロジェクト SAR インド 956,400 2002 年 8 月 14 日 のエンパワーメント─プー ナ地区農村部における試験 的 IT プログラム 44 付表 8:2006 年度方針文書 日本社会開発基金(JSDF) 2006 年度方針のガイドラインおよびプログラムの配分 1. 目的。 革新的な社会プログラムにグラントを提供し、世銀グループ 5 適格国の貧困緩和を支援する。 プログラムの下で承認されるグラントは、本ガイドラインで定められた基準に沿うものとする。 2. 重点分野。 JSDF グラントは、世銀の国別援助戦略(CAS)、貧困削減戦略(PRSP)、またはセクター 戦略の貧困削減エレメントの開発目標と整合性があり、かつ世銀が資金を提供しているプロジェクトや プログラムを補完するものである。JSDF グラントが重点を置こうとしている活動は、(i)最も貧しく最 も弱い立場に置かれた人々のニーズに直接対応する活動、(ii)革新的な手法の実験を促す活動、(iii)測 定可能な成果を速やかに達成し、持続可能な活動に発展する可能性を備えたイニシアティブを支援する (iv)コミュニティ、非政府組織(NGO) 活動、 、および他のシビルソサエティ組織の主体性、能力向上、 エンパワーメント、および参加を促進し、世銀が資金を提供するプロジェクトへの参加を促進する活動 である。JSDF 資金の約 50% は、東、南および中央アジアの適格国に配分されるものとする。 3. グラントの種類と適格性。 JSDF グラントには 2 つの種類がある。 (i) プロジェクト・グラント:このグラントが支援するのは、(a)貧困層に直接救済策を提供したり、 貧困層向けのサービスや施設の改善を支援したり、ソーシャル・セーフティーネットを強化 / 活性化 したりする活動、あるいは(b)革新的な活動と新しいアプローチの試行(特に社会セクターを対象と したもの)とする。グラントの対象となるのは世銀グループ機関の加盟国のうち、2005 年度の「世界 開発報告」で定義されている低所得国および低位中所得国とする。 (ii) キャパシティ・ビルディング・グラント:このグラントが支援するのはキャパシティ・ビルディ ングや能力向上を目的としたもので、たとえば、実地訓練を通じて現地のコミュニティや NGO を強 化したり、社会基金タイプの組織の能力または対象範囲を拡大したり、コミュニティと共に取り組み を進める現地政府を支援したりする活動である。世銀グループ機関の加盟国のうち、2005 年度の「世 界開発報告」で低所得国および低位中所得国と定義された国々が対象となる。  世銀グループには、国際復興開発銀行、国際開発協会、国際金融公社が含まれる。以下、これらすべてを総称して世銀という。 5 45 4. 金額。 JSDF グラントの額は、20 万ドルから 200 万ドルまでである。例外的な状況下で、かつ CFP(譲 許性資金・グローバルパートナーシップ総局)による事前の承認が得られれば、300 万ドルまでのグラ ント・プロポーザルを提出して検討を求めることができる。200 万ドルを超えるプロポーザルは、JSDF 運営委員会によって特に厳密に審査される。運営委員会は、プロポーザルに記載された活動の妥当性お よび実行可能性と共に、活動費が厳正なプロセスに沿って見積もられたのかどうかを検証するために、 専門家の協力を得る場合もある。 5. ファンディング・プロポーザル。 日本政府は既定のフォーマットに沿って作成された「ワンページ・ファ ンディング・プロポーザル」を基に、グラント供与の可否を決定する。このプロポーザルには基本情報、 グラントの全体的な開発目標、成果目標、支出分野などが記載される。グラントを申請する際は、ワンペー ジ・ファンディング・プロポーザルに加えて、補足情報を含めた申請書を提出しなければならない。補 足情報には、資金供与の対象となる活動の詳細、総合的な実施プラン、予想される成果、詳細な予算計画、 申請の適格性を審査するのに役立つ質問のチェックリストが含まれる。 6. プロポーザルの審査。 世銀の関連統括部門がその活動のスポンサーとなり、タスクチーム・リーダー (TTL)を任命する。プロポーザルの内容は、国別担当局長が承認した国別援助戦略(CAS)の目標と セクター・マネージャーが承認したセクター・アプローチに沿ったものでなければならない。提出され たプロポーザルは業務担当副総裁室が検討した後、日本信託基金運営部門経由で JSDF 運営委員会に提 出される。プロポーザルは、可能な限り、現地および国際 NGO、特に日本の NGO やシビルソサエティ 組織との連携を促進するものとする。 7. 対象となる支出。 物品、小規模な土木工事、サービス、トレーニング、ワークショップなど。これら の支出はすべて JSDF の下で全額支払われる。監査の費用も対象となる。コミュニティの参加や NGO との連携を促進するために、世銀スタッフの人件費を含む追加費用をグラント総額の 5% を超えない範 囲で申請することができる。さらに、通常の管理予算で対応しきれない数の世銀職員が必要となる複雑 な案件あるいは革新的な案件に伴う追加費用に対しては支払いを検討する。 8. 対象とならない支出。 次のような支出を JSDF の資金でまかなうことはできない。(i)世銀が支援す るプロジェクトと何ら関係のないパイロット・プログラム、(ii)学術研究、(iii)政府職員の給与、(iv) 海外研修または視察旅行、(v)自動車の購入。6 9. グラントの実施。 グラントを実施するのはグラントの受領機関とする。グラントの受領機関となるの は、政府(中央政府、地方政府)、国際 NGO、現地 NGO、または現地の地域団体で、どの組織が受領 機関となるかは、タスクチーム・リーダーが各組織の財務健全性、実績、およびグラント資金の利用・ 管理能力に基づいて決定する。受領機関あるいは実施機関が NGO または現地の地域団体である場合、 6  プロポーザルに記載された理由に正当性があると認められたときは、自動車の購入が例外的に許可される場合がある。 46 中央あるいは地方政府が契約に同意することが必要となる。国連機関は JSDF グラントの受領機関とな ることはできない。7 いずれの場合も、グラントの実施期間はグラント契約に署名してから 4 年を超えて はならない。いかなる例外も、それが認められるには十分正当な理由があり、かつ CFP の許可が必要で ある。グラントのタスクチーム・リーダーは、世銀の基準に基づき、かつ調達ガイドラインに従ってグ ラント監督の受託者責任を果たす。 10. 進捗報告。 開発の結果をモニタリングするに当たり、グラント申請書に基づくグラント契約が拘束 力を持つ文書となる。タスクチーム・リーダーは、年に一度「グラント状況報告」を作成し、その中で、 グラント実施状態を評価し、成果物の完了と成果を記録する責任を負う。100 万ドルを超えるグラント の場合は、グラント実施期間中に投入された資源の総量と成果を記載した「実施完了覚書」(ICM)を完 了時に作成し、この結果をドナー国にも配布する。100 万ドル未満のグラントの場合、最後の「グラン ト状況報告」にグラント活動の成果に関する追加情報を記載する。 11. 支出(拠出)分野別または活動別の資金の再配分。 支出の種類またはグラント活動の間での資金の 再配分は、新規の適格支出分野またはグラント活動を除外あるいは追加する場合を含め、法務局および CFP と協議の上、セクター・マネージャー / ディレクターによって承認される。何らかの修正が必要な 場合は、法務部と協議し、国別担当局長の承認を得なければならない。 12. グラント目標の変更。 グラントの開発目標を大幅に変更する場合は、CFP に申請書を提出し、CFP は日本政府の承認が必要かどうかを判断する。日本政府は CFP から申請書を受け取ってから 4 週間以内 に、承認または却下の判断を下す。この変更に伴うグラント契約文面の修正は、世銀の手続きに従い法 務局が承認する。 13. 取消条項。 下記の場合、グラントは中途であっても取消の対象となる。(i) グラントの正式な承認 日から 6 カ月たってもグラント契約に署名されていない、(ii)グラント契約への署名から 6 カ月たって もグラントが実施されなかった場合(支出が一切なかった場合を含む)、または(iii)CFP により進捗 していないと判断された場合。CFP は納得のいく説明が行われた場合、例外措置を認めることがある。 7  世銀ガイドラインに従って選ばれた場合、国連機関もコンサルタントとして JSDF グラントの活動に参加することができる。 47 14. 現地日本当局の関与および日本の認知度向上。 タスクチームには、作成中の JSDF 申請書について受 領国にある日本大使館と協議することが強く望まれる。タスクチームによる事前の情報共有は、意志決 定プロセスの促進に役立つ。現地組織のスタッフはまた日本大使館職員の臨席の下で JSDF 契約の署名 式典を現地で開催し、国内外の報道関係者をこのような式典に招待することも奨励すべきである。タス クチームは、署名式典を開催する場合、式典の少なくとも 10 日前に日本大使館および CFP にその旨を 連絡しなければならず、CFP はその連絡を受けて東京の日本当局に通知する。ある国の将来の JSDF グ ラント・プロポーザルについて決定を下す場合は、上記事項を順守しようとする世銀および受領機関の 努力を考慮するものとする。さらに、CFP は、(i)JSDF の資金供与に対して認知と支持を勝ち取るに は日本当局と一般市民にとって署名式典が重要であることを国別担当局長に通知することにより、また (ii)JSDF 年次報告の広範囲にわたる配布を継続し、関連する世銀文書に JSDF 情報を記載し、日本の組 織を対象としたセミナーを随時開催することにより、JSDF の認知度を高めていく。 15. 文書の管理。 業務担当の各部門は、世銀の事務管理および文書保管の各方針に従って、JSDF グラン トに関する文書、特に委任事項、コンサルタント契約、コンサルタントが作成した報告書ならびにその 他の文書、状況報告書を管理する。 16. 配分。 2007 年度の配分は 4000 万ドルで、下記のスケジュールに沿って承認が行われる。 17. スケジュール。 JSDF 運営委員会は、日本政府に年に 3 回プロポーザルを提出する(下記参照)。日 本政府は、申請内容に納得した場合、プロポーザルを受領してから 4 週間以内に可否の決定を下す。日 本政府が説明を求めた場合、プロポーザルの最終決定にはさらに時間がかかることもある。 2006 年度のスケジュール予定 ラウンド 告示 日本への提出 第 19 次 2005 年 12 月 2006 年 3 月 第 20 次 2006 年 2 月 2006 年 5 月 48 表紙写真撮影:Michael Foley 譲許性資金・ グローバルパートナーシップ総局 世界銀行 日本政府 Washington, DC