日本社会開発基金 日本社会開発基金(JSDF)は、 日本政府が資金を拠出し、 世界銀行が管理しています。 JSDF アフガニスタン特別支援 2007 年 3 月 世界銀行 日本政府 アフガニスタンにおける活動を支援すべく、JSDF 内に特別な 日本社会開発基金 窓口を設置することで世銀と合意に達しました。この活動は、 日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund) アフガニスタンの再建や、政治・経済・社会の安定に向けた は、世界銀行グループの支援対象となる加盟国の長期的な 移行を支援してきました。この特別支援は、プロジェクト・グラ 社会開発を助成しつつ、最も貧しく弱い立場にある人々に直 ントとキャパシティ・ビルディング・グラントの両方で現在までに 接援助を提供する仕組みとして、2000 年 6 月、日本政府と 総額 5000 万ドル(58 億 9000 万円)を提供しています。こう 世銀により創設されました。JSDF のグラントの対象となるのは、 したグラントは、農村部のアクセス改善や雇用、コミュニティ 貧困の緩和に即効性があり、非政府組織(NGO)やコミュニ 開発、零細事業の起業支援、金融、保健など多彩な分野 ティの団体、シビルソサエティの直接参加を促進するイニシア に提供されています。 ティブです。 JSDF の主な目的は以下のとおりです。 国家連帯プログラム (i) 社会で最も貧しく弱い立場にある人々のニーズに直接応 国家連帯プログラム(NSP)は、これまでで最大規模の 国家連帯プログラム( える革新的なプログラムを支援すること。 取組みとして、歴史的に顧みられることのなかった農村部に (ii) 最も貧しく弱い立場にある人々に、迅速かつ実証可能で 権限を与えて開発しようとするものです。具体的には、農村 持続的な便益を提供すること。 部で選出された集団が独自に採択した小規模なインフラを構 (iii) シビルソサエティ・現地コミュニティ・NGO について、キャ 築するのにグラントを提供します。これは、全国 34 州、1300 パシティ・ビルディング、参加、エンパワーメ 参加、エンパワーメ 、エンパワーメントを促進する 万人の村民の生活に影響を与えた唯一の政府プログラムで、 こと。 不安定な治安状況や極めて険しい地形、対象の多くが識字 率が特に低い遠隔地のコミュニティであるといった困難を乗り 越えて達成されました。このプログラムは現在、さらに全国の アフガニスタンにおけるJSDFの活動 4000 のコミュニティを対象に拡大されています。 2002 年 3 月、日本政府は 3 年間の援助プログラムの下で 表1:実施中および終了したJSDFのプロジェクト プロジェクトの名称 署名日 グラントの総額 終了したプロジェクト NGO支援プログラム 2002年7月17日 200万ドル 国家連帯プログラム のためのキャパシティ・ビルディング 2002年11月27日 148万ドル 保健セクターの緊急再建および開発 2003年4月3日 50万ドル 398万ドル 現在実施中のプロジェクト 将来の零細事業の起業支援 2003年9月6日 280万ドル アフガニスタン・ファースト・マイクロファイナンス・バンク 2003年11月18日 70万ドル 農村部アクセス改善のための全国緊急雇用プログラム 2004年8月28日 1960万ドル 緊急国家連帯プログラム 2005年4月10日 2590万ドル 4900万ドル ジェンダの一環で、農村部の道路を再建すると同時に雇用を 国家連帯プログラムは、農村部の3人に2人の生活に 創出することをねらいとしたものでした。 影響を与えました。 JSDF が資金を提供する「コミュニティ・エンパワーメント緊 ª 現在 2 万のコミュニティに地方行政の協議機関があります。 急プロジェクト」の下で 2002 年から始まった「全国農村部 ª 農村コミュニティの多くが独自に採択した小規模なインフ アクセス改善プログラム」は、およそ 8000 キロに及ぶ農村 ラ・プロジェクトの恩恵を受けています。 部の道路を天候に左右されないで利用できるものへと修復し、 ª 人口の 28%が現在、飲料水や改善された下水道設備を 3000 以上の村々を都市の中心部と結びました。その結果、 利用しています。 農村部の道路網は推定 3 万キロに達し、これまでに道路網 ª 25%が利用する道路が改善され、市場に行ったり各種の の 25%以上が再建作業によって維持可能な状態まで回復しま サービスを受けたりしやすくなりました。 した。このプログラムはまた、およそ 1300 万労働日分の雇用 ª 18%が改善された灌漑システムを利用しています。 を創出しました。 ª 16%が電気を利用しています。 JSDF はまた、1960 万ドルをこのプログラムの DDR & RLS ª 児童の 11%が再建された校舎で学んでいます。 (武装解除、動員解除、復員、および農村部の生活支援) ª このプログラムはおよそ 4000 人のアフガニスタン人を雇用 部門に割り当てました。JSDF の資金は、対象層の中でも特 し、地方自治体職員 60 万人を対象に技能育成が行わ に恵まれない 2 つのグループ−元兵士と農村部貧困層−を対 れました。 象に活用され、こうした人々の雇用機会や技能訓練、農村 部のアクセス改善に大きく これまでに、 貢献しています。 元将校、 JSDF は NSP に対し、3 件で総額 2900 万ドルを拠出してい 元兵士、元戦闘員、そして農村部の貧困層合計 2188 人が ます。2002 年にグラントを受けた NGO 支援プログラムが成功 工事現場監督や施工管理、工芸技能の訓練を受けています。 を収め、このときに採用されたアプローチがほかのプログラム の先駆けとなりました。以来、JSDF の基金はこのアプローチ 保健セクターの緊急再建および開発 の試験的導入、コミュニティや実施パートナーのキャパシティ・ ビルディング、そしてプログラムの拡充を支援しています。 「保健セクターの緊急再建および開発プロジェクト」は、影 NGO 支援プログラムには 200 万ドルの JSDF 資金が拠出さ 響の大きい基本医療サービスの提供範囲を拡大し、特に医 れ、アフガニスタンで初めて NGO と政府の運営面でのパート 療サービスが不足している農村部の女性や子供にも公平なア ナーシップを確立しました。NSP は、ここで得られた教訓に基 クセスを確保するのに役立っています。このプロジェクトによっ づいて進められています。 て、人口の 82%が一次医療を受けられるようになりました。独 立機関の評価によると、医療の質が大幅に改善し、医療サー ビスを受けた患者の数は 3 倍以上に増加しています。妊婦 農村部アクセス改善のための全国緊急雇用 健診を受けた女性の割合は、2003 年の 5%から 2006 年は プログラム 78%まで拡大しました。このプロジェクトはまた、医療の財政 アフガニス アフガニスタン政府(GoA)は農村部のアクセス改善を重 基盤拡大やパートナー間の調整、NGO の監督など、このセク 要な優先項目とし、2002 年から農村部の交通インフラの再構 ターにおける公衆衛生省の役割を拡大するのにも役立ってい 築を促進してきました。この取組みは、政府の社会的保護ア ます。 JSDF はきわめて重要な段階にある新規事業にも支援を提供 これまで融資を受けられなかった人々の利用は拡大してお しました。このグラントの目的は、(i) 医療が十分でない地域で、 り、創業以来、FMBA は当初の目標を達成し、利益を上げ NGO と体系的に協力できるよう公衆衛生省の能力を強化する ながら、マイクロファイナンス・ポートフォリオの充実を通して融 ことにより、予防接種や妊婦健診、産児制限など基本医療サー 資がさらに利用しやすくなるようにしています。これまでに、1万 ビスをより幅広く提供すること、(ii) 実績ベースのパートナー契 3581 件の融資(総額 1960 万ドル)が行われました。現在、 約を確立して管理すること、(iii) 公衆衛生省の中央と地方事 FMBA の顧客の 18%が女性ですが、グループ貸出し業務を 務所間のコミュニケーションを改善することにより、同省の組織 増強することによって、女性の起業家による利用が今後さらに 能力を高めること、にあります。 増えるものと予想されています。 このグラントはまず 4 人のコンサルタントに資金を提供しました。 このように同グラントは、競争が激化する同セクターを支援し この 4 人は、同省の契約管理部門の中心となり、同プロジェク ています。現在、アフガニスタンで認可を受けたマイクロファイ トの効果的な実施に責任を負っている人たちです。このグラン ナンス機関としては、FMBA のほか、最大手の BRAC アフ トはまた、NGO との契約の枠組み確立に貢献した外国人コン ガニスタ FMBA の最大のラ ンや、 イバルと目される FINCA など、 サルタントにも資金を提供しています。さらに、州の保健医療 合計 13 行あります。ここ数年、マイクロファイナンス機関の増 局長を対象としたワークショップを支援し、現場で働く公衆衛 加や零細事業に融資を行う銀行が増えており、アフガニスタン 生省の職員との連携を強化しました。このグラントは、同省自 の金融セクター拡大や民間セクター発展の大きな可能性を示 体の能力や、中央と地方事務所間のコミュニケーションの改善 すものとなっています。 に大きな成果を上げています。 ドナーおよび世銀について 将来の零細事業の起業支援 JSDF の資金は、 日本政府の拠出に 唯一、 よるものです。 JSDF の支援により、労働社会問題省はアフガニスタンの 3 世界銀行グループおよびグラントの受益者は、日本政府な つの NGO と契約を結び、4 つの州で学校に通っていない若 若 に通っていない若 らびに同国民の皆様の寛大な配慮、そして貧困削減と 者を対象にコンピュータの操作や大工仕事、電気工事、溶接、 効果的な開発援助という共通の理想に向けた取組みに対 配管、理容の職業訓練を提供しました。このプログラムは 12 し感謝の意を表します。 歳から 28 歳までの男女を対象としており、ファリャブ、カンダ 世銀の活動の一番の焦点は、開発援助を通じて最も貧 ハル、カブール、マザールの 4 州でユースセンターの建設が しい人々を支援することです。世銀は 100 カ国以上の途 完了しています。同省および NGO によって現在、1 万 6680 上国において、貧困を削減し公平かつ持続可能な発展 名以上の若者が職業訓練を受けています。 を達成すべく、資金提供や技術協力を行っています。こう した国々で、世銀は官民両機関および非政府組織と協力 して、援助戦略を策定・実施しています。 アフガニスタン・ファースト・ マイクロファイナンス・バンク(FMBA) 連絡先 FMBA は、タリバン崩壊後に初めて認可されたマイクロファ イナンス機関です。JSDF の資金は、貧困層や十分な融資 世界銀行東京事務所 を受けられない人々に金融サービスを提供するための当初の 東京都千代田区内幸町 2-2-2 〒 100-0011 東京都千代田区内幸町 キャパシティ・ビルディングに充てられています。このグラントに 富国生命ビル 10F よって、FMBA は経営情報システム(MIS)を設置し、MIS 電話:03-3597-6650(代)ファックス:03-3597-6695 の利用を含む銀行業務の管理について職員に研修を施すこ ホームページ:http://www.worldbank.org/japan/jp とが可能になりました。